クレジットカード発行会社では、法人向けのETCカードを積極的にリリースしている。
フリーランスをはじめとする個人事業主や法人の1人社長、大企業まで利用先はさまざまだ。
法人ETCカードの良い点は、経費を抑え、精算業務を効率的にしてくれて非常に便利だということ。
法人クレジットカードの大部分は、年会費無料でETCカードを追加できるのもメリットに挙げられる。
日常的に高速道路を利用する仕事の場合、精算業務が非常に簡単で合理的になるのが法人ETCカード。
本記事ではその特徴などを徹底解説する。
目次
メリット①ETC利用で高速料金が安くなる
法人ETCカードがなぜ注目されるのかについて見ていく。
まず、実利の面ではETCカードを利用すると現金やクレジットカード払いに比べて、はるかに料金が割安になる。
社用車を数多く抱え、営業などで高速道路を利用して得意先を回るケースでは大きな利点になる。
ETC利用の主な割引
ETC法人カード
- 平日朝夕割引(地方部)=朝6~9時、夕17~20時に状況に応じて30、50%割引
- 休日割引(地方部)=普通車・軽自動車が土・日・祝日などの利用で30%割引
- 深夜割引=午前0時~午前4時の利用で全ての車種で30%割引
ETCコーポレートカード
大企業などが対象のETCコーポレートカードでは、「大口多頻度割引」の制度もある。
高速道路を例にとると、契約者の自動車1台ごとの1カ月の利用額に対する「車両単位割引」
車両単位割引
- 5,000円を超え、10,000円までの部分=10%割引
- 10,000円を超え、30,000円までの部分=20%割引
- 30,000円を超える部分=30%割引
契約者の1カ月の高速道路の利用額が500万円超で、かつ自動車1台当たりの1カ月平均30,000円を超える場合に10%割引される「契約単位割引」の2つの割引が重複して適用される。
※但し平日朝夕割引との重複がないなど、ちょっとややこしい適用除外条件も複数設定されている。
会社企業としても、法人ETCカードの導入は必須になっている。
特に地方では社用車で営業回りするケースが多く、経費の削減に欠かせない。営業拠点の統廃合などでは担当するエリアが拡大することになり、ますます社用車でETCカードを利用するケースも増えてくる。
メリット②経費処理の簡略化
法人ETCカードの導入は、割引以外にもメリットがある。
毎日、社用車で高速道路を使って営業する場合、利用する社員や経理担当者の経費精算業務が煩雑化するため、社用車の台数が増えれば、その分だけ事務作業が増加。
社員が高速代を立て替えれば、その都度、出納業務に負担が生じる。
法人ETCカードを導入すると、こういった経費精算業務が効率的になる。
契約車両、ETCカード別に、クレジットカード会社などから利用明細が発行されるので、これにより経理担当が一元管理できるのがメリット。
高速代などを勘定科目に仕訳ける場合、貸方(会社側)が未払金として処理でき、会社の口座から引き落としが可能になる。
法人ETCカードを利用したケースの帳簿記載例
日付:〇月〇日
概要:高速道路代(ETCカード利用)
借方科目(利用した社員側):旅費交通費
金額:2,000円
貸方科目(会社側):未払金
金額:2,000円
旅費交通費は業務で利用した飛行機、電車、バス、高速代などの交通費、宿泊施設を利用した場合に支出したときに記載する勘定科目だ。
ETCカードを利用すると、通常は法人クレジットカードでの後日の支払いになるので、「未払金」として勘定科目に記載する。
法人ETCとコーポレートETCの違い
個人用以外のETCカードは、
- 法人ETCカード
- コーポレートETCカード
の2種類に分類される。
ETC法人カードは、使用する車を問わず利用可能。
例えば自家用車、レンタカー、リース車両を社用車として使用する場合、1枚のETCカードを使い回せる。
一方でコーポレートカードは、ETCカードごとに使用する車両が固定され、複数車両で1枚のカードを使いまわすということが出来ない。
共に業務利用のETCカードだが、なかなか明確な見分けがつきにくい。
利用方法やカードの基本性能は全く同じだが、発行条件が異なるため、クレジットカードの法人、コーポレートカードの分類に共通する部分もある。
ETC法人カード
カード発行元 | クレジットカード会社、事業協同組合 |
大口・多頻度割引 | 多頻度割引:適用外 |
割引制度 | 平日朝夕割引、深夜割引、休日割引 |
マイレージ加算 | 利用可能 |
割引方法 | 利用金額に応じて無料走行分として付与される |
利用条件 | ・1枚のカードを複数台で利用可能 ・1台の車載器で複数枚のETCカードを利用できる |
対象道路 | 高速道路、一般有料道路(ポイント付与がない道路・区間がある) |
最少利用額 | 月額利用料が5,000円以下でもポイントが貯まる |
ETCコーポレートカード
カード発行元 | NEXCO(東日本、中日本、西日本)各社 |
大口・多頻度割引 | 適用される |
割引制度 | 平日朝夕割引、深夜割引、休日割引 |
マイレージ加算 | 対象外 |
割引方法 | 当月の請求額内で割引が適用される |
利用条件 | ・固定カードのため、複数車両での利用は不可 ・1台の車載器で1枚のETCカードのみ |
対象道路 | 高速道路、一般有料道路(京葉道路、東京湾アクアライン) |
最少利用額< | 1台の月額利用額が5,000円以下だと、大口・多頻度割引の適用がない |
発行元にも違いがある。
ETC法人カードは発行が一般のクレジットカード会社であり、NEXCOではないので多くの高速道路や一般有料道路で利用できるケースが多いのが特徴。
一方でコーポレートカードは、NEXCOが指定する高速道路、一般有料道路(京葉道路、東京湾アクアライン)が対象となる。
請求方法も法人ETCカードが利用都度の支払いであるのに対して、コーポレートカードは1ヶ月の利用分を月締めでまとめて支払うことになる。
ポイントと割引
ETC法人カードは1回の利用ごとに10円=1ポイントが付与される。ポイント交換単位は以下の通り。
- 1,000ポイント=500円の無料通行分
- 3,000ポイント=2,500円の無料通行分
- 5,000ポイント=5,000円の無料通行分
※NEXCO東・中・西日本管轄の道路の場合。最大割引率は9.09%になる。
ETCコーポレートカードは、利用金額が一定の条件を満たせば、最大で30%の割引のメリットがあり、ETC法人カードを上回る割引率で、数あるETCの割引の中では最大となる。
また、1台につき1枚のETCカードの利用になるので、会社の経理部門で利用状況の把握を管理しやすく、従業員数が多い大きな会社が対象になる。
ETCの利用照会サービス
ETCを利用すると、「利用照会サービス」が利用できる。
利用した日付、通行履歴、料金などを簡単にネットで検索できるサービスだ。
このサービスが2016年7月以降から完全に登録型に移行された。
実はこの登録作業が、やや複雑でスムーズに登録移行ができないケースも相次いでいる。
ETC法人カードなら、クレジットカード会社、各事業協同組合が月次で利用明細を送付しているので、それほど不便さを感じない。
しかし、ETC法人カードでもカード会社から利用明細書が届くまでのタイムラグもあり、登録をしないと頻繁に利用状況を確認できない。
ETCコーポレートカードの場合、登録しないと管理が非常に面倒になる。
ETC利用照会サービスを使うメリット
紙の領収書、利用証明書より管理が楽
利用履歴はPDFやCSVなどのデータで保存でき、経費精算の管理の負担が少ない。
会社の部局間でのデータのやりとりがスムーズ。
過去の履歴も瞬時に分かるので、予算作成時にも利用できる。
紛失するリスクがない
紙の領収書、利用証明書では紛失するリスクもある。
対象の従業員が多ければ、これらの書類も膨大な枚数に上り管理する経理部門でもかなりの負担がある。
データで管理できれば、これらのリスクがなくなる。
複数のETCカードを一括して管理できる
1ユーザーIDで、最大10枚のETCカードを登録できる。
大企業のETCコーポレートカードでは、最大で1,000枚に上ることもある。
カードを個別でも複数枚まとめてでも明細書を表示することができる。
このため、複数のカードを使い分けている場合など、経費計上の際にスムーズに仕訳をすることができる。
利用照会サービスの登録方法
↓
2.ETC利用照会サービス(登録型)の上部バー「新規登録」をクリック
↓
3.案内に従って「ETCクレジットカード・ETCパーソナルカードご利用の方」
もしくは「ETCコーポレートカードご利用の方」のいずれかを選択
↓
4. ETCカード番号入力
↓
5.上記ETCカードによる過去15カ月以内の利用年月日を入力
(直近で登録カードを利用してETCを通過した日付)
↓
6.上記の利用年月日でETCカードを挿入していた車載器の管理番号と下4ケタのナンバー
この作業で少しやっかいなのは、車載器の番号確認。
使用したそれぞれの車載器の「12345」(5ケタ)+「67890123」(8ケタ)+「456789」(6ケタ)の計19ケタの番号を記入しなければならない。
この19ケタの車載器番号は1台1台に割り当てられたもので、その番号はセットアップ時の作業控えや車載器に明記してある。
取り付けた個所によっては、見えづらい場合もあるので、一度取り外して車載器の管理番号を確認することになる。
付随のETCカードも申し込むべし
仕事でETCカードを利用する機会が増えれば、法人向けのクレジットカードに申し込むのが、最も簡単で手軽に作ることができる。
大体の法人用クレジットカードならETCカードも申し込めるので、法人クレジットカード入会→法人ETCカードの申し込みという形を取ることになる。
その際、できるだけ年会費がかからず、取得費用を安くするのがポイント。
法人カードのETCカードの中でも年会費無料のものも多く存在する。
ETC発行枚数が無制限の法人カード
個人事業主、1人社長の法人なら1枚の法人ETCカードがあれば十分。
しかし、従業員や社員が大勢いるような会社の場合そうはいかない。
会社の規模に合ったETCカードの発行枚数が必要になるため、ETCカードを柔軟に発行してくれる法人クレジットカードは重宝する。
通常の法人クレジットカードは、例えば個人事業主用のクレジットカードなら、ETCカードの発行枚数は原則1枚、と言ったように各カードによってETCカードの発行枚数に制限が出てくる。
今回は会社の規模に合わせて複数枚のETCカードを発行できる法人クレジットカードもあるので、幾つかピックアップした。
JCB一般法人カード
年会費:初年度無料 次年度以降1,250円(税抜)
ETC年会費:無料
申込対象:個人事業主、法人経営者
国際ブランド:JCB
三井住友ビジネスカード・クラシック
年会費:1,250円(税抜)
ETC年会費:500円(税抜)年1回の利用で無料
申込対象:法人経営者
国際ブランド:VISA、MasterCard
オリコ EX Gold for Biz M
年会費:2,000円(税抜)
ETC年会費:無料
申込対象:法人代表者
国際ブランド:VISA、MasterCard
この他にも法人クレジットカードで、ETCカードの発行に制限を設けていないカードも多く、例えば一般カードではライフカードビジネスなどが挙げられる。
UC法人カードは99枚まで発行可能で、中小企業なら十分に対応できる枚数だ。個人事業主を対象にした三井住友カードマーチャントメンバーズクラブは20枚まで発行可能。
ETC専用の法人カードもあり
法人ETCカードを作る場合、一般的には法人クレジットカードの追加カードとしてETCカードが別途発行されることが多い。
法人カードはETCカードだけあれば十分という場合には、クレジットカードとETCカードの複数枚持ちは煩わしいものだ。
最近では法人クレジットカードとETCが一体となったクレジットカードも発行されている。
追加でETCカードが必要な場合は、別途クレジットカード機能のないETCカードを発行することも出来る。
高速情報協同組合の法人カード
法人ETCカードでは、クレジットカード会社以外に発行しているケースもよく見られ、発行される全ての法人ETCカードにクレジット機能がついていない。
その代わりと行ってはなんだが、ETCカードを発行する際の審査がクレジットカードの審査に比べて非常に柔軟だ。
設立直後で実績の乏しい法人に最適で、なによりも1週間前後で発行されるスピードも特徴になる。
高速情報協同組合の法人ETCカード
審査 | NEXCO(東日本、中日本、西日本)各社 |
利用限度額 | 適用される |
申込対象 | 平日朝夕割引、深夜割引、休日割引 |
費用 | 対象外 |
カード発行手数料 | 当月の請求額内で割引が適用される |
年間手数料 | ・固定カードのため、複数車両での利用は不可 ・1台の車載器で1枚のETCカードのみ |
必要書類 |
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高速情報協同組合とは、異業種交流や共同購買・共同利用を通じて、事業経営を効率よくサポートするのが目的。
コスト削減、経営戦略に役立つ情報の提供などをしており、沖縄を除く全国46都道府県を事業地区にしている。
事業の一環として、ETC制度の共同精算事業も展開している。
高速情報協同組合に加盟している主なカード
- セディナカード(ETC)
- UCカード(ETC)
- NEXCO各社が発行するETCカード(ETC)
- ENEOSカード(全国11,000店で利用できる給油専用カード)
- IDEMITSUカード(全国4,000店で利用できる給油専用カード)
経費を抑えて効率的な業務を
法人ETCカードは、経費を抑え、精算業務を効率的にしてくれる非常に便利なシステムだ。
法人クレジットカードの大部分は、年会費無料でETCカードを追加できるのもメリットに挙げられる。
常に現金や事業資金を動かす必要がないため、今では会社にとって必須のカードになっている。