海外でクレジットカードを使う場合、一般的にVISAとマスターカードがあれば安心と言われるが、中国は例外だ。
経済成長の著しい中国だが、実はクレジットカードはそれほど普及していない。
中国ではクレジットカードの審査体制の整備が進んでおらず、クレジットカードを持てる人が限られているのだ。
代わりに普及しているのが、中国銀聯(Chaina UnionPay)が発行するデビットカードだ。
銀聯カード(UnionPayカード)と呼ばれ、クレジットカードもデビットカードもあるが、デビットカードならば審査不要で発行できる。
また、中国では人民元の国外持ち出しが制限されているが、銀聯カード(UnionPayカード)を利用すれば中国国外でも制限なく買い物ができる。
日本でも、三井住友カードや三菱UFJニコスなど国内の6社で銀聯(UnionPay)のプリペイドカード、クレジットカード、デビットカードを発行できる。
最近では中国でも外国人が多い観光地やビジネス街ではVISAやマスターカードを利用できる店舗が増えているが、中国訪問の頻度が多かったり、期間が長かったりする場合は銀聯カードがあると便利だ。
本記事では、中国のクレジットカード事情から、銀聯カードの詳細、日本人におすすめの銀聯カードなどを紹介する。
中国のクレジットカード事情
世界的に見ると、クレジットカードの勢力図はVISAとマスターカードの2強体制だ。しかし、中国に目を転じると、世界とは異なる事情が見えてくる。
中国では、世界的な観光地やショッピングエリア、外国人が多く宿泊するホテルなどを除くと、VISSAやマスターカードの普及率はそれほど高くない。
5大国際ブランドでいうと、日本人の保有率が多いJCBに関しては、2003年に中国国内におけるJCBブランドカードの加盟店業務が開始され、利用が促進されている。
一方で、アメックス、ダイナースに関してはほぼ使えないと考えたほうがいいだろう。
香港やマカオは加盟店が多い
同じ中国国内でも、香港やマカオでは事情が異なる。
20世紀末まで、香港はイギリス領、マカオはポルトガル領であり、中国に返還されてまだ年月が浅い。
これらの地域では、旧宗主国の経済環境が踏襲されており、中国本土よりもVISAやマスターカードが利用しやすい状況にある。
中国人はデビットカードの利用が多い
中国人の間で普及が進んでいるのが、デビットカードだ。デビットカードは、銀行口座と紐づけして、カード利用がされるとリアルタイムで口座から利用分が引き落とされる。
デビットカードが普及した要因は、発行に際して審査がないことだ。中国国内では、クレジットカードの審査の制度があまり整っておらず、審査に通る人は限られている。
もうひとつ、デビットカードが普及している理由は、中国国外への人民元持ち出し制限だ。
中国人、外国人にかかわらず、中国の出入国の際に携帯できる人民元は2万元(日本円で32万円相当)までと定められている。
しかし、デビットカードを利用して国外で2万元以上利用するのは問題ないので、デビットカードの普及を後押ししている。
銀聯カードのシェアが圧倒的
デビットカードの中でも中国国内で圧倒的なシェアを誇っているのが国際ブランド「銀聯(UnionPay)」がついた「銀聯(UnionPay)カード」である。
読み方は「銀聯=ぎんれん」。銀聯=UnionPayで、UnionPayカードと呼ばれることもある。
銀聯カードにはクレジットカードもあるが、審査不要で持てるデビットカードのほうが中国国内では主流だ。
銀聯を運営しているのが中国銀聯(China UnionPay)。中国人民銀行によって促進され、中国国務院の同意の元、2003年に上海を本社として設立された中国のカード連合組織。
2003年8月、国際的な自主ブランドである銀行カードとして「銀聯カード」が発表された。
銀聯ブランドの中国国内における認知度は100%で、中国東部や大中都市部のみならず、中西部や中小都市部や農村地域にまで普及、圧倒的なシェアを誇る。
中国国内外で、銀聯カードを使ったショッピングの他、ATMを使って預金や現地通貨を引き出すこともできる。
偽札被害や関税法違反を減らしたい中国当局としても、銀聯カードを猛プッシュしている。
また、銀聯ではカード決済だけでなく、QRコード決済や非接触IC決済「クイックパス」も提供している。
中国国外でも普及が進む
中国人の旺盛な購買意欲を何とか自国で発揮してもらおうと、中国以外の外国でも銀聯カードを利用可能な店舗が増えている。
銀聯のグローバル業務を取り扱っているのが、中国銀聯の子会社である銀聯国際(UnionPay International)だ。
銀聯国際の発表によると、2020年12月末時点での日本国内における銀聯カード加盟店舗数は110万店を突破している。
また、2021年4月からは、日本コンラックスの電子決済端末(ME-10機種)を搭載した、全国約1万台の自動販売機で銀聯(Union Pay)のQRコード決済が利用可能となっている。
中国以外の世界に目を転じると、加盟店舗数は約5,500万店(2021年3月移転)と、そのネットワークを拡大している。
現在、銀聯カードを取り扱っているのは、世界180の国と地域で、特に中国人が多く訪れるアジア太平洋地域で成長している。
また、銀聯のQRコード決済は世界中の約3,000万店舗で利用でき、非接触IC決済「クイックパス」は世界中の約2,500万店舗で利用できるなど、カード決済以外もグローバルに展開している。
日本で銀聯カードを入手する方法
中国国内でストレスフリーなカードライフを送りたいなら、銀聯カードを手に入れることをおすすめする。
銀聯カードは中国ではデビットカードが一般的であるが、日本で入手できる銀聯カードはすべてクレジットカードとして発行される。
では、日本で銀聯カードを手に入れるためにはどうすればよいのだろうか。
銀聯カードはVISAやマスターカードと同様に、銀聯という決済サービスの利用をライセンスだけを供与して、カード発行自体は行っていない。
銀聯カードは日本国内のカード会社とライセンス契約を結んでおり、日本のカード会社が発行を行なっている。
日本国内で銀聯カードを発行しているのは、三井住友カード株式会社、三菱UFJニコス株式会社、中国銀行など6社(2021年3月時点)。
銀聯カードの使い方
銀聯カードを中国で利用する際には、6桁の暗証番号(00+指定の4桁)を入力した上で、サインをしなければならない。
日本のクレジットカードとは使い方が多少異なるので注意しよう。
銀聯カード発行におすすめ
ここからは、日本人が銀聯カードを申し込む際、おすすめのカードを3枚紹介しよう。
三井住友カード
三井住友カードの銀聯カードは、本カードとは別にショッピング専用カードとして発行されるため、現地での人民元のキャッシングには利用できない。
ショッピング枠は本会員と共有される。
デザインは「パンダデザイン」と「中国大陸デザイン」のいずれかから選択できる。
また、最上級カードである「三井住友カード プラチナ」の保有者には、中国の山並みをイメージしたシルバーの「三井住友銀聯プラチナカード」が発行される。
三井住友カードの概要は、以下のとおりである。
申込条件 | 満18歳以上の人(高校生を除く) |
---|---|
発行元 | 三井住友カード |
年会費 | 税別1,250円(初年度無料、翌年度以降も条件付き無料) |
家族会員 | 年会費:税別440円(1人目のみ初年度無料) |
旅行傷害保険 | 最高2,000万円の海外旅行保険 |
国際ブランド | VISA、マスターカード |
ポイント | 1,000円→1ポイント(還元率0.5%) |
利用枠 | 最高80万円 |
追加可能な電子マネー | iD、PiTaPa、WAON、Apple Pay |
家族会員も銀聯カードを発行できるが、口座引き落としは本会員の口座から行なわれる。
発行手数料は無料だが、更新時(5年間)には更新料(本会員:税別1,000円、家族会員:税別500円)が徴収される。
ANA銀聯カード
以下のANAカードの追加カードとして発行できる。
- ANA VISAカード
- ANA マスターカード
- ANA VISA Suica カード
- ANA TOKYU POINT ClubQ PASMO マスターカード
- ANA VISA nimocaカード
概要は、以下の通り。
申込条件 | 満18歳以上の人(高校生を除く) |
---|---|
発行元 | 三井住友カード |
年会費 | 無料※カード再製・再発行手数料は550円(税込) |
家族会員 | あり |
旅行傷害保険 | – |
国際ブランド | VISA |
ポイント | Vポイント/200円→1ポイント ※1ポイント=1マイルとして移行可能 |
利用枠 | ショッピング枠最高80万円 |
「三井住友カード」に加え、三井住友カードが発行する「ANA VISAカード」「ANAマスターカード」「ANATOKYU POINT ClubQ PASMO マスターカード」でも、以下の中国国内ホテルの優待宿泊プラン(宿泊料金の割引、特典や優待の付帯)が用意されている。
上海:オークラガーデンホテル上海、ホテル・ニッコー上海
天津:ホテル・ニッコー天津
北京:ホテルニューオータニ長富宮
無錫:ホテル・ニッコー無錫
大連:ホテル・ニッコー大連
また、上海の銀聯コールセンターでは、カード盗難・紛失時の案内、カード利用に関する案内、中国国内加盟店への各種説明などを提供している。
ただし、発行される銀聯カードのデザインが、ANAデザインの1種類のみとなる。
MUFGカード(一般)
「MUFGカード(一般)」の保有者は、MUFG銀聯カードを発行することができる。
カードデザインはゴールドとシルバーがあるが、MUFGカード(一般)は一律でシルバーのデザインとなる。
MUFGカード(一般)の概要は、以下のとおりである。
申込条件 | 満18歳以上で安定した収入のある人(高校生を除く) |
---|---|
発行元 | 三菱UFJニコス |
年会費 | 税別1,250円 |
家族会員 | 税別400円 |
旅行傷害保険 | 最高2,000万円の海外旅行保険 |
国際ブランド | VISA、マスターカード |
ポイント | 1,000円→1ポイント(還元率0.5%) |
利用枠 | ショッピング枠最高40万円 |
追加可能な電子マネー | なし |
新規発行手数料(本会員:税別1,000円、家族会員:税別300円)がかかり、5年間の更新時にも発行手数料がかかるが、年会費は発生しない。
MUFG銀聯カードは本カードとは別にショッピング専用カードとして発行されるため、現地での人民元のキャッシングには利用できない。
ショッピングの支払い回数も、1回払いのみである。
海外の銀聯加盟店でMUFG銀聯カードを使用すると、1,000円利用につき1ポイントのところ、2倍の2ポイント付与される。
また、中国国内の海外アシスタンスサービス「ハローデスク」も利用可能で、中国の現地情報の提供やホテル・レストランの予約を承っている。
WeChat Paymentの増加
ここまで銀聯カードについて紹介してきたが、ここ数年中国ではWeChat Paymentという支払い方法が増えてきている。
WeChatは日本でいうLINEと同じように、中国でのコミュニケーションツールとして多くの人が利用している。
WeChat PaymentはWeChatの機能の一つで、金額を自分で入力した後に表示されるバーコードを、お店が読み取ることで支払いが完了する。
中国の銀行口座と紐付けることで、デビットカードと同様に携帯端末上で決済を済ませることができる。
日本版WeChatも存在しているが、残念ながらPayment機能は利用することができない。
中国版でPayment機能を利用するにも、中国の銀行口座が必要になるため、日本人が利用するには少々ハードルが高そうである。
しばらくは日本人が中国に行く場合は銀聯カードが最適な支払い方法になりそうだ。