利用者数の増加が進むスマホ決済アプリのなかで、au PAYも次第に存在感を増してきている。
Pontaポイントとの連携により、さらに多くのユーザーを獲得する可能性も示した。
本記事ではau PAYの導入を検討している店舗事業者に向けて、導入メリット・注意点から、申込・審査、実際の決済の手順などを詳細に解説するので、検討材料として役立ててほしい。
目次
au PAYの概要
au PAYはスマホアプリ決済のひとつで、QRコード決済のアプリだ。
KDDI株式会社が提供しているためauユーザーと相性の良い決済方法ではあるが、auユーザー以外も利用できる。
2020年2~3月にかけて「誰でも!毎週10億円!もらえるキャンペーン」を実施し、キャッシュレス界隈で注目を集めた。
この大型キャンペーンでauは非常に多くのユーザーを獲得、2020年5月発表のプレスリリースによると、au PAYの会員数は2,300万人を突破している。
店舗導入のメリット
auユーザー+Pontaユーザーに対する集客効果
2020年5月から、au PAYはPontaポイントとの連携をスタートした。
この連携により、約9283万人(2019年11月末時点)のPonta会員からau PAYへの流入が見込まれる。
連携では、au WalletポイントがPontaポイントに変更され、au PAY利用に応じてPontaポイントが貯まるようになった。
また、Pontaポイントをau PAYにチャージして支払えるため、Ponta加盟店以外でも、au PAY加盟店であればPontaポイントで買い物ができる。
例えばセブンイレブンではPontaポイントを使えないが、au PAYには対応している。間接的な方法で、セブンイレブンでPontaポイントを使って買い物ができるのだ。
楽天ペイとの共通QRコードあり
2019年6月より、au PAYと楽天ペイが一定の協力関係にあることも押さえておきたい。
au PAYと楽天ペイは、店舗提示用の共通QRコードを持っており、これを利用すれば、au Payユーザー・楽天ペイユーザーは、au PAY加盟店・楽天ペイ加盟店のいずれでも決済が可能になる。
つまり、共通QRコードを利用すれば、au PAY加盟店でありながら楽天ペイユーザーにも利用してもらうことができるのだ。
KDDIと楽天は、2018年に事業事業協争の推進で合意し、決済・物流・通信分野での協力が行われている。
各種決済インフラの相互利用を推進することから、この取り組みにつながった。
初期費用がかからない
決済の仕組みを導入するときに気になるのは、入会金や加盟料などの初期費用ではないだろうか。
au PAYの加盟店に加入するための初期費用は0円だ。
ユーザー読み取り式の場合、QRコードを店頭に掲示すればすぐに利用できるようになる。
また、店舗用アプリとして「au PAY for BIZアプリ」があり、これも無料で利用可能だ。
小規模で初期費用は出せないお店でも、au PAYは簡単にスタートできる。
2021年7月末まで、決済手数料0円
現在、au PAYではキャンペーン実施中で、2021年7月までは決済手数料がかからない。
通常であれば3.25%の決済手数料が発生するが、これが0円になるのは大きなメリットだ。
期限付きの特典ではあるが、au PAYを試してみる良い機会だ。
店舗導入のデメリット・注意点
スマホ決済アプリでは後発組
au PAYは2020年から存在感を増しているとはいえ、他のスマホ決済アプリと比べると後発組だ。
PayPayやLINE Payなど先行している他社アプリは、au PAYより多くのユーザーを獲得している。
au PAYも2020年からユーザー数が急増しているが、現時点では先行するアプリには及ばない(2020年6月時点)。
しかしPontaポイントとの協力で、より多くの顧客を獲得できる土壌ができた。今後、ユーザー数でも他社アプリに近づく可能性はある。
決済手数料無料は期間限定
決済手数料の無料期間は、現在のところ2021年7月31日までの予定となっている(2020年6月時点)。
あくまで予定であるため無料期間が2021年8月以降も続く可能性もあるが、有料化になる可能性もある。
基本的には、予定どおり有料化されると想定しておいたほうが良いだろう。
決済手数料として3.25%を支払っても店舗経営に支障が出ないよう、有料化される前から対策をしておきたい。
加盟店申込・審査から利用開始まで
申込手順
au PAY加盟店の申し込みはWebフォームから、以下の手順で行う。
- 公式サイトで仮申し込みの手続きをする
- 登録したメールアドレスに仮申し込み完了の連絡が届く
- 本申込み用のアクセスURLとパスワードがメールで届く
- 本申込み用のWebフォームにアクセスし、必要事項を記入して送信
- 審査結果メールが届く
審査結果は申込みから最短2日、メールで届く。
2週間以上経過しても返答がない場合は問い合わせてみよう。
申込条件、必要な情報・書類
au PAY加盟店の申込条件は法人・個人事業主であることだ。
申込時には以下の情報・書類が必要となるので、準備しておこう。
- ホームページまたは「店舗外観写真」「店舗内韓写真」1枚ずつ(店舗名・商材が確認できるもの)
- 金融機関の預貯金口座(振込先口座名義と申込み契約名義が一致するもの)
- 個人の場合は本人確認書類(以下から1点※有効期限内のものに限る)
・運転免許証または運転経歴証明書
・パスポート
・健康保険被保険者証
・国民健康保険被保険者証
・在留カード
・特別永住者証明書
また、必須ではないが、店舗用のタブレットやスマホなどの端末があったほうが利用しやすい。
加盟店管理サイト「Cinnamon(シナモン)」
au PAY加入を申し込むと、加盟店管理サイト「Cinnamon(シナモン)」のCinnamon IDが発行され、利用できるようになる。
ログインすると、申込状況、審査完了後に必要な書類などを確認できる。
au PAY専用端末を利用することもできる
au PAYでは、QRコードを読み取るための専用端末をレンタルしている。
店舗のタブレットやスマホがあるなら不要だが、用意できない場合に利用しよう。
専用端末を借りるには、別途レンタル契約を交わすことが必要だ。また、レンタル料が発生する。
支払い上限が1回25万円
au PAYの支払い上限は、1回あたり25万円だ。
一般的な日用品、食品などであれば特に問題はないと考えられるが、高額な商品の場合は決済に使えないこともあるので注意しよう。
導入ツールと店舗用アプリ
審査に通過すると、au PAYの導入ツールが郵送される。
店頭に貼るためのステッカーや掲示用のQRコードなどを利用して、すぐに利用を開始できる。
また、KDDIは中小企業のキャッシュレスを支援するため、店舗用アプリ「au PAY for BIZ」を提供している。
au PAY加盟店の申込み完了後、最短で約2週間半で利用開始可能だ。
店舗用アプリ「au PAY for BIZ」
au PAY for BIZは、au PAYから届くメールに記載されたIDとパスワードでログインする。
メールは「au PAY for BIZアプリ ID/PWのお知らせ」の件名で届くので、捨てないように注意しよう。
au PAY for BIZでは、売上・決済の履歴の把握や、ユーザーへの返金処理が可能だ。
また、ユーザーのQRコードを読み込む機能もあり、店舗側で金額を入力して決済ができる。
加盟店でのau PAY決済の流れ
QRコード提供方式は2通り
au PAYでは、以下2通りの方法で決済が可能だ。
サービスリリース当初は加盟店がコードを読み込む方法のみだったが、2019年6月より加盟店がコードを提示する方法も加わった。
加盟店がコードを読み込む
- ユーザーがau PAYを起動してQRコードをスマホ画面に表示する
- 加盟店がau PAY for BIZで「決済」をタップする
- 加盟店が金額を入力し、「コード読み取り」をタップする
- 入力金額のユーザー確認後、加盟店がユーザーのQRコードを読み取る
- 決済が完了する
加盟店がコードを提示する
- 加盟店が店頭にコードを提示しておく
- ユーザーがau PAYを起動してコード読み取り
- ユーザーが金額を入力する、加盟店の確認後、支払い
- 入力金額の加盟店確認後、支払い
- 決済が完了する
返金方法
au PAYでは、返金もスマホ上で簡単にできる。手順は次の取り。
- ユーザーがau PAYの取引履歴または決済完了メールから、支払日時と金額を加盟店に提示する
- 加盟店が「au PAY for BIZ」を起動、取引記録を検索する
- 日時・金額がユーザー提示情報と合っていることを確認、「払い戻し」をタップ
- 返金処理完了
精算サイクル
au PAYの精算方式は、以下2つのパターンから選択できる。
- 月1回(末日締め⇒翌月末日払い)
- 月2回(15日締め/翌月15日払い、末日締め/翌月末日払い)
1回の振込額が1万円未満の場合、次回精算に繰り越しとなる。ただし2回連続での繰り越しは行わない。
精算サイクルの変更は、加盟店管理サイトのCinamon(シナモン)で手続き可能だ。
加入にかかる費用
初期費用・入金手数料無料
au PAYを導入するための初期費用はかからない。年会費・入会金・登録料などを支払う必要はない。
入金についても、銀行口座への振込手数料はKDDIが負担するため、入金手数料は発生しない。
期間限定で決済手数料無料
決済手数料は通常3.25%(1円未満の端数は切り捨て)のところ、2021年7月(予定)までキャンペーンにより0円となっている。
初期費用・入金手数料・決済手数料の3つがすべて0円であることで、コストを気にする店舗も導入しやすくなっている。
Alipay/WeChat payに同時申込可能
au PAYに申込む際、AlipayとWeChat Payに同時に申込むことも可能だ。
Alipayはアリババグループ、WeChat Payはテンセントグループという、いずれも中国を代表するIT系の大企業運営しているスマホ決済アプリだ。
中国は今やスマホ大国と呼ばれることもあるほどで、決済アプリのなかでもAlipayとWeChat Payはポピュラーな支払い方法として定着している。
中国人観光客への集客効果が期待でき、日本国内でも導入する店舗が増えている。
ただし、AlipayとWeChat Payについては、au PAYとは別に独自の審査が行われることは押さえておこう。
2020年9月まで決済手数料が無料
AlipayとWeChat Payについては、2020年9月まで決済手数料0円のキャンペーンを実施中だ。
au PAYの2021年7月まで無料と比べると期間が短いので、早めに申込もう。
他のスマホアプリ決済との比較
au PAYを含む主要なスマホ決済アプリについて、店舗にとって気になる項目を比較してみる。
比較するサービスは、PayPay、LINE Pay、d払い、楽天ペイ。
au PAY | PayPay | LINE Pay | d払い | 楽天ペイ | |
---|---|---|---|---|---|
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
決済手数料 | 無料 ※2021年7月以降は3.25%の予定 | 店舗読み取り式:加盟店ごとに設定 ユーザー読み取り式:無料※2021年9月30日まで | プリントQR/LINE Pay店舗用アプリ:無料※2021年8月1日以降は2.45% StarPay:3.45% オンライン決済(物販・サービス):3.45% オンライン決済(デジタルコンテンツ):5.5% | 3.24% | 3.24%※2020年7月以降変更の可能性 |
入金手数料 | 無料 | ジャパンネット銀行:無料 それ以外:105円/回※2020年7月以降 | 通常サイクル:無料 入金申請:250円/回※2020年6月30日18:00以降 | 無料 | 楽天銀行:無料 楽天銀行以外:330円/回 |
入金サイクル | 月1回:末日締め翌月末日払い 月2回:15日締め翌月15日払い/末日締め翌月末日払い | ジャパンネット銀行:翌日 ジャパンネット銀行以外:翌々営業日 | 通常サイクル:月末締め翌月第3営業日払い 入金申請:即時 | 毎月1日~15日の決済:当日末日 毎月16日~末日の決済:翌月15日 | 楽天銀行:翌日 楽天以外:翌営業日 |
導入までの日数目安 | 最短2週間半 | 2週間前後 | 2週間前後 | 2週間前後 | 1~3週間 |
上表での比較項目について、さらに詳しく解説していく。
初期費用
au PAY、PayPay、LINE Pay、d払い、楽天ペイいずれも初期費用・導入費用はかからない。
小規模な店舗でも負担なく導入できるのが、スマホ決済アプリのメリットだ。
ただしau PAYの専用端末のレンタルのように、イレギュラーで別途費用が必要となることもある。
案内資料や注意事項などをしっかりチェックしておこう。
決済手数料
au PAY | PayPay | LINE Pay | d払い | 楽天ペイ |
---|---|---|---|---|
無料 ※2021年7月以降は3.25%の予定 | 店舗読み取り式:加盟店ごとに設定 ユーザー読み取り式:無料※2021年9月30日まで | プリントQR/LINE Pay店舗用アプリ:無料※2021年8月1日以降は2.45% StarPay:3.45% オンライン決済(物販・サービス):3.45% オンライン決済(デジタルコンテンツ):5.5% | 3.24% | 3.24%※2020年7月以降変更の可能性 |
決済手数料に関しては、au PAY、PayPayのユーザー読み取り方式、LINE Payのが期間限定プリントQR方式、店舗用アプリ方式が期間限定で無料となっている。
LINE Payは期間終了後、2.45%となるが、他のサービスに比べるとやや低めの設定になっている。
au PAY、PayPayに関しては、期間終了後、何%になるかは明らかにされていない。
また、楽天ペイの手数料は現在3.24%だが、2020年7月1日以降に変更になる可能性があるので注意しよう。
入金手数料
au PAY | PayPay | LINE Pay | d払い | 楽天ペイ |
---|---|---|---|---|
無料 | ジャパンネット銀行:無料 それ以外:105円/回※2020年7月以降 | 通常サイクル:無料 入金申請:250円/回※2020年6月30日18:00以降 | 無料 | 楽天銀行:無料 楽天銀行以外:330円/回 |
入金手数料に関しても各アプリで特徴が見られる。
無条件で入金手数料無料となるのはau PAYのみ。
LINE Payも通常は入金手数料無料だが、入金申請を行う場合、2020年6月30日の18:00以降は250円/回となる。
PayPayはジャパンネット銀行のみ、楽天ペイは楽天銀行のみ無料としている。
入金サイクル
au PAY | PayPay | LINE Pay | d払い | 楽天ペイ |
---|---|---|---|---|
月1回:末日締め翌月末日払い 月2回:15日締め翌月15日払い/末日締め翌月末日払い | ジャパンネット銀行:翌日 ジャパンネット銀行以外:翌々営業日 | 通常サイクル:月末締め翌月第3営業日払い 入金申請:即時 | 毎月1日~15日の決済:当日末日 毎月16日~末日の決済:翌月15日 | 楽天銀行:翌日 楽天以外:翌営業日 |
入金サイクルがもっとも早いのは、LINE Payの「入金申請」という仕組みだ。ただし、2020年6月30日の18:00以降は250円/回と有料になる。
その次に早いのがPayPayと楽天ペイで、ジャパンネット銀行や楽天銀行といった提携しているネット銀行であれば、翌日に入金してもらえる。
そこまで急がなくも、月に2回ほど入金できれば大丈夫なら、他のアプリでも問題はないだろう。
翌日に入金がないと厳しい状態が続く場合、ビジネスの仕組みに問題がある。手持ちの資金に余裕を持てるよう、資金繰りやコストなどを見直す必要があるだろう。
導入までの日数の目安
au PAY | PayPay | LINE Pay | d払い | 楽天ペイ |
---|---|---|---|---|
最短2週間半 | 2週間前後 | 2週間前後 | 2週間前後 | 1~3週間 |
導入までの日数については、どのアプリもほぼ2週間程度となっており、審査で時間がかかる場合はさらに長引く可能性もある。
決済として利用できるまでに半月くらいはかかると考えて、余裕を持っておいた方が良い。
楽天ペイとau PAYのどちらに申し込むなら
au PAYと楽天ペイは連携していて、共通のQRコードを使えばau PAY加盟店・楽天ペイ加盟店どちらの店も利用できる。
そのため、au PAYと楽天ペイ、まずはどちらかのみ導入してみようと考えている場合、コストの面ではau PAYがおすすめだ。
楽天ペイでは決済手数料が3.24%かかるのに加え、入金手数料も楽天銀行以外では1回あたり330円かかるためだ。
総合的に見て、au PAY導入のうがコストは安く済むことが分かる。
ただし、au PAYの決済手数料が有料化した場合は、一度見直す必要がある。
こんなお店は導入がおすすめ
ここまで解説してきた内容から、au PAYを導入するのにおすすめのお店は以下のとおりだ。
- auユーザー・Pontaユーザーを引き入れたいお店
- キャッシュレス決済の導入コストを節約したいお店
au PAYはauユーザー以外でも利用できるスマホ決済で、Pontaポイントが貯まる・使えることも大きなメリットだ。
Pontaユーザー数は全国に9,000万以上で、au Pay会員と合わせて1億人規模の会員基盤となった。
auユーザーやPontaユーザーをお店に誘導したいなら、au PAYは見逃せない。
またau PAYは初期費用と入金手数料がかからず、期間限定だが決済手数料も無料だ。
キャッシュレス決済を導入したいがコストが心配な人も、au PAYなら大きな出費なしで導入できる。