法人クレジットカードは、数多くのカード会社から発行されており、Visa、Mastercard、JCB、アメックス、ダイナースクラブの5大国際ブランドがすべてがそろっている。
本記事では、法人クレジットカードと個人カードの相違点、審査基準、メリット・デメリットなどを解説する。
目次
法人クレジットカードとは?
法人クレジットカードは、「ビジネスカード」や「コーポレートカード」ともいわれるカード。事業用途の決済のために発行されるクレジットカードだ。
呼び方の違いとして、法人カードは中小企業や個人事業主、コーポレートカードは大企業が対象になる。
個人カードは、各カード会社の利用規約で「個人カードで事業用の決済はできない」などと定められている。とはいえ、カード会社が決済項目を一つひとつ詳細に確認しているわけではない。特に個人事業主の大多数は、個人カードで仕事用の決済もしているのが実情だ。
法人カードの利用方法は個人カードと同じ。かつては一括払いのみが主流だったが、最近では分割払い対応など個人カードと同じ支払い方法ができるカードが増えてきた。
法人・個人カードの違い
法人クレジットカードと個人のカードは、利用方法は同じだが、大きな違いとして下記のような点があげられる。
法人カード | 個人カード | |
---|---|---|
申込基準 | 法人/法人代表者/個人事業主で条件を満たす ※カードにより条件は異なる | 一定年齢以上で条件を満たす ※カードにより条件は異なる |
決済口座 | 法人名義 ※個人名義を選べるカードもある | 個人名義 |
追加カード | 社員向け追加カードを複数枚発行可能 ETCカードも複数枚発行可能 ※カードによって対応は異なる | 家族カードを発行可能 ETCカードを発行可能 ※カードによって対応は異なる |
特典・サービス | ビジネスに特化した特典・サービスあり | 個人利用を想定とした特典・サービス |
申込基準
カードによってさまざまなので一概にはいえないが、法人カードは法人や法人代表者、個人事業主などなんらかの事業を営んでいることが必要。申込時に登記簿謄本や決算書などの書類を求められることも多い。
個人カードは、少なくとも18歳以上、カードによってはそれ以上の年齢で、カードごとに定められた条件を満たすことが必要。
決済口座
法人代表者や個人事業主を対象としたクレジットカードであれば、個人名義の口座を利用できる場合もある。
追加カード
法人カードと個人カードの大きな違いといえるだろう。法人カードは、従業員が利用することを想定しているため、カードにもよるが、まとまった枚数の追加カード・ETCカードを発行できる場合が多い。
一方の個人カードは、家族カード・ETCカードを発行できるカードはあるが、法人カードほどの枚数は発行できない。
個人カードは「人」に発行するが、法人カードは一つの企業や会社に対して発行するカードといえる。
特典・サービス
基本的なところは法人カードでも個人カードでも共通していることが多いが、法人カードは特にビジネスに特化した特典・サービスが追加で付帯するカードが多い。
法人カードとコーポレートカード
法人クレジットカードは2つに分類される。法人カードやビジネスカードと言われるカード群と、コーポレートカードと言われるカード群だ。
カードスペック、使い方に差はないのだが、以下のように会社の規模によって区別される。
- 法人カード・ビジネスカード=中小企業・個人事業主
- コーポレートカード=大企業
法人クレジットカードの場合、カードの券面は個人名が記載される。一方のコーポレートカードは、券面に会社名と個人名を記載するケースが多い。
また、コーポレートカードという名の通り、対象企業にカスタマイズしたクレジットカードになる。
三井住友カードの法人カード比較
年会費 | 対象 | |
---|---|---|
三井住友ビジネスカードfor owners | 1,375円(税込) | 満18歳以上の個人事業主、もしくは中小企業代表者 |
三井住友ビジネスカード(クラシック) | 1,375円(税込) | 法人のみを対象(カード使用者は20名以下が目安) |
三井住友コーポレートカード | 1,375円(税込) | 大企業向け(カード使用者は20名以上が目安) |
中小企業経営者、個人事業主を対象にした法人カードは、利用限度額が100万円以下なら、柔軟に発行される可能性がある。
しかし、コーポレートカードの場合、企業の規模はもちろん、財務体質まできっちり審査される。
数百人~数千人の従業員を抱えている大企業だけに、倒産すればカード会社にとっても、深刻なダメージを受けるからだ。
個人事業主でも法人カードを持てるのか?
法人クレジットカードは、「法人=企業=会社」に対して発行される。カード利用者は、法人の代表者、従業員らが対象になる。
一方で、多くの法人カードで、組織に属さないフリーランス、個人事業主も対象になっており、法人に属しているか否かはそれほど重要視されていない。
むしろ、現在、各カード会社は個人事業主に向けて積極的な法人カードの加入をPRしている。その背景には、働き方の多様性がある。
IT技術の加速もあり、フリーランス・個人事業主として働く人は増え、職業形態も多様化している。カード会社は、そこに、法人カード需要を相当数見込んでいるのではないだろうか。
ここで、逆転現象も起きるケースがある。たとえば、過去に個人のアメックス・ゴールド・カードを申し込んで審査否決された個人事業主が、法人のアメックス・ビジネス・ゴールド・カードを発行されたケースもある。
同じく高属性が必要なダイナースクラブでも、似たような事例が各サイトで報告されている。
法人カードの審査基準は厳しい?
法人カードというと、事業内容や収益などが厳しくチェックされるのかと思うかもしれないが、そうとも言い切れない。
カードによる差はあるが、柔軟な審査が行われるケースが多い。そのため、審査の難易度が「個人用カード」>「法人カード」になる事例も多い。
一般的には、以下のように法人設立後3年以上経過しており、黒字決算が望ましいとされている。
しかし、立ち上げたばかりの会社、個人事業主でも審査に通ることは珍しくない。むしろそういった法人や個人事業主に積極的に訴求しているカードもある。
赤字決算も、節税対策で車両購入などを行い、故意に赤字計上している場合もあり、その性質のほうが重要だ。
法人カードの審査書類
法人カードでは、審査において、下記のように法人・個人事業主ならではの書類提出が必要な場合がある。
▽法人
- 希望限度額が100万円以下→「登記事項証明書」「代表者の本人確認書類」
- 希望限度額が500万円以下→上記の必要書類に加え、「決算書2期分」
- 希望限度額が500万円超→上記書類に加え、「不動産謄本」
▽個人事業主
- 希望限度額が100万円以下→「事業主の本人確認書類」
- 希望限度額が100万円超→上記書類に加え、「確定申告書2期分」
なお、上記を参考にすると、法人も個人事業主も希望限度額を100万円以下に設定すれば審査対応が柔軟になる可能性が高い。
カードの名義は法人なのか個人なのか
法人クレジットカードの名義は、法人(会社)なのか個人なのか。
「法人」だから「法人(会社)名義」という印象があるかもしれないが、法人カードもコーポレートカードも、個人名義になる。法人カードであっても、券面の名義には必ず個人名が入っている。
クレジットカードは、名義人以外が使ってはならない。決済時に署名を行う場合は、名義人の署名が必要だ。
もし名義を法人(会社)としてしまうと、誰が利用したかが分からなくなり、クレジットカードの基本となるシステムが成り立たない。防犯上の問題もある。
一方で、法人カードは引き落とし口座が法人名義となるケースが多く、混乱しやすいところだ。引き落とし口座は個人名義でも設定できるカードもある。
メリット・デメリット
- 経費処理の出納業務の負担が軽減される
- 経理担当業務が合理化され、人員配置に余裕ができる
- 経費の支払いが一本化され、効率的な事業運営に集中できる
- 個人事業主の場合、仕事とプライベートの利用を区分けできる
- クレジットカードの付帯サービス(海外旅行傷害保険)が利用できる
- 年会費無料のカードが個人用カードに比べて極端に少ない
- ポイント還元率が低く(0.5%以下)、全く付与されないカードもある
- 個人用カードに比べて種類が少ない
- 法人カード(法人経営者)にはキャッシングの設定がない
法人カードのメリット・デメリットは、事業形態によっても重みが変わる。基本的にはメリットが大きく、法人カードの特徴を押さえて活用できれば、デメリットはほとんど気にならないレベルだ。
特に個人・小規模の法人では、法人カードは優秀な経理社員のようなものだ。最近はカードと経理ソフトと連動し、クラウド上で自動的に経費処理ができる機能もある。
おすすめ法人カード
ライフカードビジネスライトプラス
法人カードの中では、希少な年会費が完全無料のカードで注目度がピカイチだ。
- 対象は法人経営者、個人事業主
- 年会費無料
- 国際ブランドはVisa、Mastercard®、JCB
- 追加カード、ETCカードの年会費は無料
EX Gold for Biz S(M)
ポストペイ型(後払い式)の電子マネー「iD」「QUICPay」をダブル搭載している。
- 対象はSが個人事業主、Mが法人代表者
- 年会費は初年度無料で、次年度以降2,200円(税込)
- 国際ブランドはVisa、Mastercard®
- 追加カード、ETCカードの年会費は無料
三井住友カード ビジネスオーナーズ
登記簿謄本や決算書などの書類、固定電話などがなくとも申し込める。個人事業主や法人代表者の最初の一枚におすすめのカード。
- 対象は満18歳以上の法人代表者、個人事業主
- 年会費永年無料
- 国際ブランドはVisa、Mastercard®
- 追加カードも年会費無料(19枚まで発行可能)
- 550円(税込)
※初年度無料
※前年度に一度でもETC利用のご請求があった方は年会費が無料
フリーランス・個人事業主にも法人カードはおすすめ
フリーランスなどの個人事業主は、サラリーマンよりも社会的な信用度が低いとされ、ステータス性の高い個人カード発行は難しいのが実情だ。
個人カードの審査では、年収、職業形態、勤務先など属性が審査される。極端な例では、年収1,000万円以上を稼ぐ個人事業主よりも、年収300万円の公務員の属性が高いケースもある。
しかし、法人カードとなれば話は別だ。法人カードの審査では、事業の実態を電話確認することが最大のポイント。その分、就業形態、家族構成、住居形態など一般的な個人カードの審査項目が簡略化されるケースが多い。
個人事業主、実績のない法人経営者でも、法人カードであれば審査で否決される可能性が少なくなる。そして、法人カードで支払い遅延を起こさず、クレジットヒストリー(利用実績)を積み重ねていけば、将来的に個人のステータスカードの審査にも通りやすくなる。