クレジットカードには、海外旅行保険が付帯するものがある。
海外旅行前などに新しくクレジットカードに申し込む際、海外旅行保険を基準のひとつにすることも多いのではないだろうか。
自動付帯か利用付帯かによって適用条件が異なるが、いずれにしてもカードの年会費以外の追加料金不要で利用できる便利な保険だ。
一方、海外旅行を申し込む際、保険会社が提供する海外旅行保険への加入を勧められることがある。
数百円程度で加入できる安価なものが多いので、念のためにと利用することも多いだろう。
しかし、海外旅行保険付帯のクレジットカードを所有している場合はどうだろうか。
カード付帯の海外旅行保険が利用できればそれだけで十分で、保険会社の保険は不要なのだろうか。
本記事では、クレジットカード付帯の海外旅行保険について解説するとともに、旅行時に申し込む保険会社の海外旅行保険の違いを比較する。
2つの海外旅行保険を比較してみると、大きな違いはないが、疾病死亡や支払い方法の点で違いがある。
カード付帯の海外旅行保険は疾病死亡に補償が適用されないことが多く、支払いは後払いになることが多い。
このため、旅行先のエリアによっては、カード付帯の海外旅行保険だけでなく、保険会社の旅行保険も利用したほうが良い場合が出てくるのだ。
万が一のときの安心のために、本記事を参考にして、利用できる海外旅行保険を見直してほしい。
カード付帯と一般的な保険の違い
クレジットカード付帯の海外旅行保険と保険会社の海外旅行保険とでは、大きく次の3つの点が異なる。
- 保険料
- 補償期間
- 補償対象の範囲
- 治療費の支払い方法
1. 保険料
クレジットカード付帯の海外旅行保険は、カード会員であれば利用でき、カードの年会費以外の費用は発生しない。
ただし、カードを所有していれば保険の対象となる自動付帯と、旅行に関する料金をカードで支払ったときに保険の対象となる利用付帯とがある。
一方、保険会社の海外旅行保険は、保険の内容に応じた保険料を支払う必要がある。
2. 補償期間
クレジットカード付帯の海外旅行保険が適用されるのは出国から90日以内と期間が決まっている。
旅行の都度申し込む海外旅行保険は、期間を設定でき、最長で3カ月(90日)というのが一般的だ。
期間を短くすることで保険料を抑えることもできる。
3. 補償対象の範囲
クレジットカード付帯の海外旅行保険は、基本的に「疾病死亡」の補償がついていない。
疾病死亡とは、病気を原因として死亡した場合に適用される保険のこと。
保険会社の海外旅行保険は、疾病死亡にも対応している場合が多い。
疾病死亡は利用する機会の少ない補償ではあるが、現地の衛生状態が不安な旅行の場合はあったほうが良いかもしれない。
4. 治療費の支払い方法
クレジットカード付帯の海外旅行保険の中には、治療費を先払いしなければならず、保険金は後請求になるものがある。
保険会社の海外旅行保険は、治療に際しての自己負担は一切なく、キャッシュレスで治療を受けることができる。
ただし、支払いにクレジットカードを利用することができれば、両社の違いはほぼないと言える。
カード付帯の海外旅行保険
クレジットカード付帯の海外旅行保険は、カードの種類によって付帯の有無や補償内容に違いがある。
一般的に、大手カード会社発行のステータス高めのカードには、ほぼ海外旅行保険が付いている。
カード付帯の海外旅行保険は、カード年会費以外の追加料金不要で、カード会員であれば利用できる手軽さがメリットのひとつだ。
ただし、利用の際には次の点に注意しよう。
自動付帯と利用付帯
クレジットカード付帯の海外旅行保険には、自動付帯と利用付帯という2つの種類がある。
自動付帯は、対象のクレジットカードを所有しているだけで自動的に適用される保険のことだ。
利用付帯は、海外旅行で必要な交通費や旅行代金を対象のクレジットカードで支払った場合に適用される保険だ。
一部には、旅行出発後の海外で買い物などをすることで利用付帯の保険が適用されるカードもある。
自分のカードがどんな条件で保険適用になるのか、利用前にしっかり確認しておくことが大切だ。
補償の内容
クレジットカード付帯の海外旅行保険では、一般的に次のような補償内容がある。
カード会社により、適用される補償の内容や範囲に違いがあるので、自分の持っているカードに付帯する保険の補償内容についてチェックをしておこう。
傷害死亡保険
傷害死亡保険とは、旅行中の事故や怪我を原因として死亡した場合に支払われる保険。
金額は総じて高めに設定されているが、あくまで死亡した場合に適用されるものであり、怪我の治療などに使えるものではない。
この補償金額が高いからと言って、自分自身に対する安心を買えるというわけではないので注意しておこう。
後遺障害保険
後遺障害保険とは、怪我や病気などにより後遺症が残ってしまった場合に支払われる保険。
後遺症が残るほど大きな怪我をするということはあまりないが、自分自身に返ってくる保険であり、あると安心できる。
傷害治療保険
傷害治療保険とは、事故で怪我をした際の入院費や通院費、治療費などの傷害治療費用が支払われる保険。
海外旅行中に使うことになる割合が多いのは、この保険になるだろう。
補償金額にも注意しておこう。
疾病治療保険
疾病治療保険とは、病気の医療にかかった費用が支払われる保険。
地域によってはその土地ならではの伝染病のリスクもある。
特に衛生状態が良くない発展途上国などでは注意が必要で、実際に病気にかかる例も少なくないため、補償内容をしっかり確認しておこう。
国によっては高額の医療費がとられるところもあるため、この補償額は高ければ高いほど安心と言える。
救援者費用保険
救援者費用保険とは、被保険者が旅先で入院した場合などに、家族が現地に駆けつけるための費用を補償してくれる保険。
また、被保険者の救助費用や救援費用などにも適用できるため、利用頻度は比較的高い。
携行品損害保険
携行品損害とは、被保険者の荷物を盗難や破損から守るための保険。
海外ではスリや置き引きなども多く、また長距離を移動することになるため、荷物の破損も起こりやすくなる。
カメラやパソコンなどは高級で、買い直そうと思ってもそう簡単にはいかない。
もしもの時に備えて高めの金額設定をしていると安心だ。
賠償責任保険
賠償責任保険とは、被保険者が誰かに被害を与えてしまった場合、その賠償に対して支払われる保険である。
故意でなくとも、ちょっとした不注意から商品を壊してしまう場合や、誰かに怪我をさせてしまうこともあるだろう
自分は絶対に大丈夫などと思わず、備えとして高額な設定がされているものを選ぶと安心できる。
旅行先別おすすめ保険
クレジットカード付帯と保険会社の海外旅行保険にはあまり違いがないようにも思える。
しかし、どこに旅行するかで、カード付帯の海外旅行保険だけで十分なのか、保険会社の旅行保険も利用したほうが良いのかが異なる。
以下に、旅行先のエリア別におすすめの保険を解説する。
東南アジアやアフリカなど
発展途上の国、インフラが整っていない地域へ旅行に行く場合は、日本では考えられないような病気に掛かってしまう可能性も捨てきれない。
水を飲んだだけでアウトなこともある、いわゆるローカル感の強い旅先の場合は、疾病死亡の補償がつく保険会社の海外旅行保険の方が良いだろう。
アメリカやヨーロッパなど
欧米諸国はインフラも整っており、衛生面が問題となることはほとんどないはずだ。
しかし、もしも病気になった場合の治療費が圧倒的に高いという問題がある。
たとえば盲腸の手術をハワイで行った場合、256万円も請求されてしまうのだ。
万が一を考えると、保険会社の海外旅行保険か、キャッシュレス診療に対応するクレジットカードを用意しておいた方が良い。
中国や韓国など
インフラが整っているアジア圏であれば、衛生状態も悪くはなく、治療費も安いため、クレジットカードの保険があれば十分と言えるだろう。
基本はカード、不足分を一般保険で補う
多くのクレジットカードに付帯している海外旅行保険。
その補償内容はかなり充実しており、海外旅行保険が付帯しているカードが一枚あれば、大抵の国に安心して旅行に行くことができる。
一方で、疾病死亡に対する補償や、支払い方法に関する面で、一般の保険にしかないメリットがあるのも事実である。
クレジットカードの保険を過信することなく、補償内容をしっかり確認したうえで、不足部分を保険会社の保険で補えば、もしもの時も安心だ。
どこに旅行に行くのか、そこではどんなリスクが考えられるのか、事前の準備や認識が、安心安全な旅には必要不可欠だ。