アメリカン・エキスプレスは2026年9月30日、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・プラチナ・カードに付帯する海外旅行傷害保険の適用条件を改定すると発表した。2027年2月1日以降は、カードを持っているだけで補償される自動付帯がなくなり、旅行代金をこのカードで支払うことが補償の前提条件になる。
2027年2月1日から自動付帯がなくなり、カード決済が必須に
改定の中身はシンプルで、自動付帯の補償枠が丸ごと廃止される。これまでビジネス・プラチナ・カードの海外旅行傷害保険には「カードに自動付帯」と「旅行代金をカードで決済した場合」の2段構えの補償があり、カード決済をしていない旅行でも傷害死亡・後遺障害で最高5,000万円、傷害治療・疾病治療でそれぞれ最高1,000万円などの補償を受けられた。
2027年2月1日以降は、このうち自動付帯の欄がなくなる。旅行代金をビジネス・プラチナ・カードで決済した場合の補償内容(傷害死亡・後遺障害最高1億円など)は改定前と同じ水準で維持されるが、カード決済をしていない旅行には一切の補償が付かない。つまり「補償額が下がる」のではなく、「支払い方法次第で補償の有無そのものが決まる」変更である。
アメックスは2026年10月1日に個人向けのプラチナ・カードの海外旅行傷害保険を利用付帯に切り替えており、今回の改定は法人・個人事業主向けのビジネス・プラチナ・カードにも同じ考え方を広げるものといえる。同社は10月5日にも保険関連サービスの見直しを告知しており、付帯保険の再編が相次いでいる。
会社の別カードや請求書払いで航空券を手配する出張は要注意
今回の改定で影響が大きいのは、ビジネス・プラチナ・カードを「出張時の保険代わり」として持っている法人ユーザーだ。出張の手配方法によっては、気付かないうちに無保険で渡航することになりかねない。
たとえば次のようなケースでは、2027年2月1日以降はビジネス・プラチナ・カードの海外旅行傷害保険が適用されない可能性が高い。
- 航空券を会社の別の法人カードや経費精算用のカードで購入している
- 出張手配を旅行代理店に任せ、代金を請求書払い・後払い・銀行振込で精算している
- 取引先や主催者が航空券を手配し、本人はチケット代を支払っていない
- ホテル代や現地での経費だけをビジネス・プラチナ・カードで払っている
特に旅行代理店経由の請求書払いは、法人の出張管理でよく使われる方法である。社内の出張規程で「海外出張時の保険はビジネス・プラチナ・カードの付帯保険で代替する」と運用している企業は、2027年2月までに航空券の決済手段を見直すか、別途海外旅行保険を手配するかを検討しておきたい。
補償の条件になる「旅行代金」の範囲は狭い
利用付帯で最も重要なのは、何をカードで払えば条件を満たすのかという点だ。公式の定義では、海外旅行の場合の旅行代金は「日本出入国のために時刻表に基づいて運行される公共交通乗用具のチケット」と「パッケージ・ツアーの料金」とされている。
対象になるのは出入国の航空券・船のチケットとパッケージ・ツアー
公共交通乗用具とは、航空法・鉄道事業法・海上運送法に基づいて運行される航空機・電車・船舶などを指す。日本を出入国するための航空券や、航空券を含むパッケージ・ツアーをビジネス・プラチナ・カードで決済するのが、条件を確実に満たす方法になる。
手数料や空港関連費用は対象外
一方で、旅行に関連する支出でも旅行代金に含まれないものが多い。公式に対象外とされているのは次のような費用だ。
- ガソリン代、高速料金、駐車場代、レンタカー代
- 航空券の発券手数料、航空券の消費税、座席指定手数料
- 空港利用税、ラウンジ利用料、タクシー代
- 電子マネーのチャージ代・デポジット代、プリペイドカード購入費
- 電車やリムジンバス等の回数券
航空券本体を別手段で払い、発券手数料や座席指定料だけをビジネス・プラチナ・カードで払っても条件は満たさない。空港までのタクシーや駐車場の支払いも同様である。
出国後に現地で交通機関のチケットを払う方法もある
日本国内でカード決済をしていなくても、出国後に海外で初めて利用する公共交通乗用具のチケット料金をビジネス・プラチナ・カードで支払えば、その購入時から補償期間終了まで補償される。ただし、補償が始まるのはチケットを購入した時点からであり、出国から現地でチケットを買うまでの間に起きた事故や病気はカバーされない。出発前に日本国内で航空券やツアー代金を決済しておくのが基本と考えたほうがよい。
なお補償期間は、海外旅行目的で住居を出発してから戻るまでで、かつ日本出国前日の0時から入国翌日の24時までとなる。出国翌日から90日後の24時が限度である。
改定前後の補償内容
基本カード会員の補償内容を改定前後で比べると次のとおり。括弧内は基本カード会員の家族に対する補償額である。
| 保険種別 | 改定前・自動付帯(2027年1月31日まで) | 改定後・自動付帯(2027年2月1日から) | 旅行代金をカード決済した場合(改定前後とも) |
| 傷害死亡・後遺障害 | 最高5,000万円(最高1,000万円) | 補償なし | 最高1億円(最高1,000万円) |
| 傷害治療費用 | 最高1,000万円 | 補償なし | 最高1,000万円 |
| 疾病治療費用 | 最高1,000万円 | 補償なし | 最高1,000万円 |
| 賠償責任 | 最高5,000万円 | 補償なし | 最高5,000万円 |
| 携行品損害 | 1旅行中最高100万円 | 補償なし | 1旅行中最高100万円 |
| 救援者費用 | 保険期間中最高1,000万円 | 補償なし | 保険期間中最高1,000万円 |
携行品損害は免責3,000円、年間限度額100万円である。旅行代金をカード決済した場合の補償額は改定前と変わらないため、これまでも出張の航空券をビジネス・プラチナ・カードで払っていた人にとっては、実質的な影響はほとんどない。
追加カード会員の補償内容は、今回の改定では変更されない。
2月1日をまたぐ旅行と付保証明書の扱い
切り替えの境目について、アメックスはよくある質問で扱いを示している。
1月中に出国した旅行は自動付帯の対象
出発日が2027年1月、帰国日が2027年2月となる旅行は、カード利用がなくても自動付帯の補償対象になる。判断基準は出国日で、出国日が2月1日以降であればカード利用が必要になる。1月下旬から2月にかけての長期出張でも、出国が1月中であれば渡航中に無保険になることはない。
自動付帯の保険金の請求期限は、請求権が発生した日の翌日から起算して3年である。
発行済みの自動付帯の付保証明書は2月1日以降の出発に使えない
ビザ申請や渡航先の入国手続きのために、すでに自動付帯の付保証明書を発行してもらっている場合は注意が必要だ。付保証明書は発行日時点で有効なものとされ、2027年2月1日以降に出発する旅行は自動付帯の補償対象外になる。
2月以降の出張で付保証明書が必要な場合は、旅行代金をビジネス・プラチナ・カードで決済したうえで、利用付帯の付保証明書の発行を依頼することになる。問い合わせ先はアメリカン・エキスプレス・保険ホットライン(0120-234-586、9時〜17時、土日祝休)である。
出張手配の流れを2027年1月までに確認したい
今回の改定で確認しておきたいのは、ビジネス・プラチナ・カードの会員本人や社員の海外出張で、航空券やツアー代金を誰が・何で払っているかという点だ。
すでに出張の航空券をビジネス・プラチナ・カードで決済している会員は、改定後も同じ補償が続くため、特別な対応は不要と考えられる。一方、旅行代理店への請求書払いや別の法人カードで手配している企業は、海外出張の分だけビジネス・プラチナ・カードで決済する運用に切り替えるか、法人向けの海外旅行保険などを別途検討する必要がある。
支払い方法を変えられない場合でも、2027年1月までに出国する出張は従来どおり自動付帯で補償される。2月以降の出張予定がある会員は、早めに社内の手配ルールと付保証明書の要否を確認しておくとよいだろう。










