個人事業主や法人の経営者が、資金調達のためにキャッシングやカードローンの利用を検討することがあるかもしれない。
法人クレジットカードは通常、ショッピング枠の利用を前提としたもので、資金調達を目的としてキャッシングを利用できるカードは少ない。
ただし個人事業主であれば、個人利用の延長としてキャッシングを利用できる可能性があるようだ。
カードローンは、ビジネスローンの一種で、カードローン専用のカードが発行されることが多い。
カードローンのメリットとしては、銀行融資に比べて審査のハードルが低く、審査結果が出るのも早いということがあげられる。
一般的なローンのように利用目的が限定されることもないので、急ぎで資金調達をしたいときに役立つだろう。
ただし、銀行融資に比べて金利が高く、返済期間も短いので、どうしても必要なときだけの利用にとどめたほうが良い。
本記事では、法人クレジットカードのキャッシングとカードローンについて、その仕組みとともにおすすめの法人クレジットカードを紹介する。
また、カードローンについて、銀行融資との比較をおこないながら、審査の詳細の他、メリット・デメリットを比較する。
法人カードはキャッシングに不向き
個人向けクレジットカードの中には、ショッピング利用のための「ショッピング枠」とは別に、クレジットカードでお金の借入れができる「キャッシング枠」が設定されているカードも多い。
しかし、法人向けクレジットカード(法人カード)ではキャッシング枠が設定されないのが普通で、キャッシング枠のある法人カードは非常に限られている。
個人の場合、まったくお金を返せなくなるということはあまりないが、法人の場合、破産による貸し倒れリスクが大きいことが理由のひとつだ。
また、キャッシングを利用する法人は、資金繰りに苦労しているとみなされる可能性が高い。
個人事業主はキャッシング利用が可能
法人カードではキャッシング利用ができないことが多いが、個人事業主はキャッシングが可能になる可能性がある。
法人のキャッシングは事業資金であることがあきらかだが、個人事業主のキャッシングは額も少なく、個人利用の延長とみなされるからだ。
キャッシング可能な法人カード
法人カードはキャッシングができないものが多いと説明したが、例外的にキャッシング可能な法人カードも存在する。
そんな法人カードを以下に紹介する。
EX Gold for Biz(エグゼクティブ ゴールドフォービズ )
オリコカードが発行するクレジットカード「EX Gold for Biz」には、個人事業者向けの「EX Gold for Biz S」と、法人代表者向けの「EX Gold for Biz M」がある。
「EX Gold for Biz M」にはキャッシング枠の設定がないため、ここでは、「EX Gold for Biz S」を紹介しよう。
ショッピング枠 | ~300万円 |
---|---|
ショッピング支払方法 | 1回、2回、据置1回、リボ(実質年率15%) |
キャッシング枠 | 10万円~100万円 |
キャッシング支払方法 | 1回、リボ(最長55回、実質年率15%~18%) |
申込資格 | 個人事業主 |
返済日 | 毎月末日締め、翌月27日払い |
①キャッシングについて
キャッシング枠は、10万円~100万円である。返済回数も最長55回まで設定できるので、キャッシュフローにも比較的余裕が生まれる。
以下のATM・CDでキャッシングが可能である。
- ゆうちょ銀行
- 都市銀行(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など)
- 「Orico」マークのある地方銀行、信金、信組など
- コンビニATM(セブン銀行、ローソンATM、イーネット、イオン銀行)
利用の際は、ATM利用手数料として110~220円(税込)かかる(利用金額によって変動)。
②ビジネスに役立つ特典
「EX Gold for Biz Sには、以下のようなビジネスに役立つ特典も満載。
- 会計ソフトをお得に導入可能
- カード会社の優待特典(レストラン、ホテルなど)
- 証書貸付商品とローンカードを優遇金利(最大年2%優遇)で用意可能
- 旅行傷害保険(国内、海外)、ショッピング保険
- 福利厚生サービス
最初の一枚としても、十分に検討の価値がある法人クレジットカードといえよう。
EX Gold for Biz(エグゼクティブ ゴールドフォービズ )
三井住友カード ビジネスオーナーズ
三井住友カードが発行する「三井住友カード ビジネスオーナーズ」には、一般カード、ゴールドカードがあるが、利用枠などはいずれも同じ設定だ。
ショッピング枠 | ~500万円 ※所定の審査がございます。 | |
---|---|---|
ショッピング支払方法 | 1回、リボ、分割、2回、ボーナス1回 | |
キャッシング枠 | 詳細は公式サイト参照 | |
返済日 | 毎月15日締め翌月10日払い、毎月月末締め翌月26日払い |
①キャッシングについて
ゆうちょ銀行ATM、コンビニATM、提携金融機関ATMのほか、海外でも利用できる(法人はキャッシングを利用できない)。
③ビジネスに役立つ特典
「三井住友カード ビジネスオーナーズ」には、以下のようにビジネスに役立つ特典が満載だ。
- 決済法座は個人口座と法人口座のいずれかから選択可能
- ビジネスサポートサービス(アスクル、レンタカー、引っ越しなど)
- 海外旅行傷害保険
- 国内旅行傷害保険【ゴールド】
- 空港ラウンジサービス【ゴールド】
- 空港ラウンジサービス【ゴールド】
三井住友カード ビジネスオーナーズ
年会費 | 永年無料 |
---|---|
追加カード | 年会費永年無料 |
還元率 | 0.5%~ |
旅行傷害保険 | 海外:2,000万円(利用付帯) |
三井住友カード ビジネスオーナーズ ゴールド
年会費 | 5,500円(税込) ※入会後年間100万円の利用で翌年度以降永年無料 ※対象取引や算定期間等の実際の適用条件などの詳細は、三井住友カードのホームページを必ずご確認ください |
---|---|
追加カード | 年会費永年無料 |
還元率 | 0.5%~1.5% ※最大1.5%は対象の個人カードとの2枚持ちが条件。 |
旅行傷害保険 | 海外:2,000万円(利用付帯) 国内:2,000万円(利用付帯) |
カードローンとキャッシングは別物
クレジットカードの本来の目的は「ショッピング枠」を利用して商品を購入することだ。
カードによっては追加機能として「キャッシング枠」で現金を借りることができる。
一方のカードローンは、銀行・商社金融発行のローン専用のカードによって現金を借りる。
ATMでお金を引き出したりローンを組むことはできるが、クレジットカードのように商品を購入することはできない。
例外的にカードローン機能付きのクレジットカードも存在するが、今回は別のカードとして考える。
カードローンの目的は、銀行や消費者金融期間から限度額の範囲内で資金融資を受けることだ。
個人事業主や自営業者、会社経営者などが事業資金を調達する方法としては、「銀行からの融資」と「ビジネスローン」がある。
カードローンはこのうちビジネスローンに分類される。
カードローンと銀行融資の違い
銀行融資とビジネスローン(カードローン)はどちらも融資だが、プロセスに大きな違いがある。
銀行融資は、事前に稟議書による審査により、返済計画から返済能力まで詳しく審査される。
一方でビジネスローンは申込時点のクレジットヒストリーなどのスコアリングから審査を行い、限度額などを決定する。
両者には、申込から融資実行までのスピードや、金利などで大きな違いが生まれる。
基本的に、ビジネスローンのほうが審査スピードが早く、ハードルも低いが、その分金利が高くなりがちだ。
メリット・デメリット比較
カードローンのメリット
使用用途が限定されない
カードローンを含むビジネスローンの大きな特徴の一つが、借りたお金の使用用途が限定されないことだ。
たとえば自動車ローンや住宅ローンなどは、文字通り自動車、住宅の資金としてしか利用できない。
ビジネスローンの場合はこういった制限がなく、自由な用途で資金を使うことができる。
担保がなくても融資を受けられる
ビジネスローンでは、担保の設定が必要ない場合がある。
担保を設定したほうがより有利な条件(審査のハードル、低金利、融資金額など)で融資をしてもらえるが、担保がなくても融資を受けられるビジネスローンがあることは、担保にできるものがない法人にとってありがたい。
ただし担保がない分、金利は高く設定されている。
保証人が不要
ビジネスローンでは、連帯保証人、第三者保証人が不要な場合が多い。
保証人をお願いできる人というのは限られている上、万が一のときに大きな迷惑をかけてしまうので、それが不要というのはありがたい。
最短即日借り入れも可能
ビジネスローンはスピード重視のサービスだ。
融資基準が事前に決まっているので、所定の基準を満たせば審査に通り、融資金額や金利、返済期間が決まる。
「オリックスVIPローンカードBUSINESS」などは、最短60分の審査で、即日融資が受けられる可能性もある。
一般的な銀行融資では審査にかかる時間が長く、また、融資によってその期間が異なる。
銀行の支店長が決裁権を持つような融資の場合、比較的審査スピードが速いが、それでも2週間前後はかかる。
それよりも融資金額が大きい場合は、銀行本部の審査部に決済権が移り、審査期間は3週間~1か月程度になる。
信用保証協会付の融資の場合、さらに審査期間はがかかり、少なくとも1か月はかかる。
銀行よりも融資条件が良い公的機関から融資を受けようとなると、それ以上に審査期間が長くなる。
審査基準が緩め
一般的にビジネスローンの限度額は法人の銀行融資よりも低く設定されており、銀行融資ほど厳しい審査は必要ないものと考えられる。
また、法人の銀行融資に比べて提出する書類も少ないので、審査の判断材料も少なく、審査のハードルは比較的低いはずだ。
カードローンのデメリット
金利が高い
カードローンを含むビジネスローンの金利はは、銀行融資もはるかに高い。
一般的な銀行融資の場合、金利は1~5%程度。
しかしカードローンの場合、カードにもよるが、「オリックスVIPローンカードBUSINESS」の金利は年6~17.8%、「CREST for Biz」の金利は年6~18%だ。
限度額が低め
カードローンを含むビジネスローンは、銀行融資よりも限度額が低くなる。
カードにもよるが、「CREST for Biz」の限度額は最高300万円、「オリックスVIPローンカードBUSINESS」の限度額は最高500万円である。
一方、法人の銀行融資の限度額は、以下の基準を基に決定され、条件が良いほど限度額は上がる。
- 借入金対月商比…売上高の何倍の借入があるか)
- 債務償還年数…借入がキャッシュフローの何年分あるか
- 支払利息負担度…利息を支払う利益がどの程度あるか
- 流動比率…「現金+現金化可能な資産」で1年以内に支払う負債を賄えるか
審査の融通が利かない
ビジネスローンの審査では、審査基準がある程度決められており、個人向けカードローンの審査と似ている。
個人向けカードローンの審査には、スコアリングシステムが採用されている。
これはいわゆる「パッケージ型」で、申込者の属性や借入状況などを点数化し、一定以上の点数に満たなければ一律で審査に落ちるというもの。
法人の銀行融資の場合はいわゆる「オーダーメイド型」で、まず審査の可否が決まり、その後に限度額や金利、借入期間などの融資条件を検討していく。
返済期間が短い
たとえば「オリックスVIPローンカードBUSINESS」の返済期間は、最長で10年2ヶ月である。
一見長いようだが、金利が高いうえにリボ払いを採用しているため、返済期間が長引くほど利息がかさんでしまう。
法人への銀行融資は、返済期間が10年~30年(担保などによって異なる)となっており、返済方式もリボ払いではないため、ビジネスローンほど利息の支払いに苦労しないだろう。
個人事業主・法人の資金調達
法人クレジットカードではキャッシング枠を利用できない場合が多いが、個人事業主であればキャッシングを利用できる可能性がある。
支払い方法も、一括払いだけでなく分割払いやリボ払い、ボーナス払いなど選択肢がある。
法人で資金調達を急ぐ場合は、カードローンの利用を検討すると良い。
カードローンは、銀行融資に比べて審査のハードルが低く、すぐに審査結果が出るため、急ぎのときに使える。
ただし、通常の銀行融資より高金利かつ返済期間が短いので、どうしても必要なときのみの利用にとどめよう。