2017年より、国税をクレジットカードで納付できるようになった。
それ以前にも、自治体によっては地方税をクレジットカードで納付できるケースはあったが、国税となれ利用できる範囲が大きく広がる。
国税をクレジットカードで納付するメリットは、利便性の高さだ。
クレジットカード払いであればコンビニで手続きができるので、店舗数も多く、24時間いつでも手続きができる。
また、クレジットカード払いでは引き落としが1~2カ月後になるので、実質的な支払いが猶予されるのも助かることがあるだろう。
クレジットカードのメリットとしては、ポイント還元率が考えられるが、国税納付の場合、手数料が利用者負担となるので注意が必要だ。
クレジットカードで国税を納付することで得をしたいという人は、高還元率のカードを選び、手数料と比較したうえで利用したほうが良いだろう。
本記事では、クレジットカードで納付できる税金の種類と納付の方法、国税をクレジットカードで納付できるメリットと注意点をまとめた。
目次
クレジットカード納付できる国税
クレジットカードで納付できる国税の種類(税目)は次の通り。
基本的に、全ての税目がクレジットカード納付可能となっている。
附帯税(加算税、延滞税等)もクレジットカードで納付可能だ。
ただし、印紙を貼付して納付するなど、納付書を添えて納付されない税目は、クレジットカードで納付できない。
- 申告所得税及び復興特別所得税
- 消費税及び地方消費税
- 法人税(連結納税を含む)
- 地方法人税(連結納税を含む)
- 相続税
- 贈与税
- 源泉所得税及び復興特別所得税
- 源泉所得税
- 申告所得税
- 復興特別法人税(連結納税を含む)
- 消費税
- 酒税
- たばこ税
- たばこ税及びたばこ特別税
- 石油税
- 石油石炭税
- 電源開発促進税
- 揮発油税及び地方道路税
- 揮発油税及び地方揮発油税
- 石油ガス税
- 航空機燃料税
- 登録免許税(告知分のみ)
- 自動車重量税(告知分のみ)
- 印紙税
なお、自治体によっては住民税など地方税もクレジットカードで納付できるケースがある。
地方税もクレジットカードで納付したい場合、対応できるかは自治体によって異なるので、自分が住民票を置く自治体を調べてみよう。
2016年12月末時点では、全国1,788の自治体のうち1,100超の自治体でクレジットカード納付を導入している。
利用可能な国際ブランド
国税をクレジットカードで納付する場合、以下の通り、5大国際ブランドのいずれも利用できる。
また、法人カードはカードによって利用できる場合と利用できない場合があるので、カード会社へ確認しておいた方が良い。
- VISA
- MasterCard
- JCB
- アメックス
- ダイナースクラブ
ちなみに、日本人が日本国内で利用することはまずないが、7大国際ブランドに挙げられる、銀聯とディスカバーは利用できない。
また、カード会社にもよるが、デビットカードやプリペイドカードは、上記5大国際ブランドであっても、国税の納付には利用できないケースが多い。
クレジットカード納付のメリット
国税をクレジットカードで納付する場合、国税のクレジットカード納付専用サイト「国税クレジットカードお支払サイト」より手続きを行う。
このサイトは、国税庁長官が指定した納付受託者であるトヨタファイナンス株式会社が運営している。
このサイトを通じて、国税をクレジットカードで納付するメリットとしては、次の点が挙げられる。
夜間や土日祝、いつでもどこでも納付
通常、税金の納付は、銀行や郵便局などの金融機関、所轄の税務署、あるいはコンビニで行う。
金融機関や税務署は、窓口の対応時間が限られており、待ち時間も長くなりやすいので、特に平日勤めの人にとって手間が大きい。
コンビニは比較的店舗数が多く、ほとんどの店舗が24時間営業なので、金融機関での納付に比れば楽だが、それでも、急ぎの時や忙しい時に、わざわざ出向くのは手間だろう。
クレジットカードでの納付ならば、自宅やオフィスなど、「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスできる場所であればどこでも、税金の納付が可能になる。
また、システムメンテナンス中などを除き、24時間365日、夜間や土日祝なども納付が可能だ。
これにより、うっかり支払いを忘れて延滞してしまうということも防ぎやすいだろう。
支払いに猶予が生じる
クレジットカード納付は、国税通則法に則って、「国税クレジットカードお支払サイト」で納付手続が完了した日が納付が完了した日となる。そして、この日を基準に延滞税や利子税が計算される。
しかし、クレジットカード納付では、実際に代金が引き落とされるのは、カードの設定に基づき、1~2カ月後となる。
法定納期限内に「国税クレジットカードお支払サイト」で納付手続が完了していれば、カード利用代金の引き落とし日が法定納期限よりも後になった場合でも延滞税等は発生しない。
支払いに猶予が生じることで、企業などではキャッシュ・フローの改善にも役立つだろう。
また、クレジットカード納付では、カード会社やカードの種類にもよるが、一括払いだけでなく、分割払い(3回、5回、6回、10回、12回)やリボ払いが可能なことが多い。
その分、手数料はかかり、特にリボ払いは最終的に支払う金額が大きくなりやすいためおすすめしない。
しかし、税金の種類と条件によってはまとまった金額になることがあり、一度に支払うのは負担が大きすぎる場合は、分割払いは一つの方法だ。
ただし、所得税など税金の種類と納税者の事情によっては、分割納付を認めてもらえる場合がある。手数料もかからないので、可能であれば分割納付の方が良いだろう。
ポイント還元
ほとんどのクレジットカードは、利用額に応じてポイントが貯まる。
それは、国税の納付においても同様だ。
国税はまとまった金額になることが多いので、ポイントを効果的に貯めることができるだろう。
ただし、カードによっては、国税の納付はポイント還元の対象外となる場合や、ポイント還元率が変わる場合があるので、あらかじめ確認しておこう。
また、通常のショッピングでは、クレジットカード利用の手数料は加盟店側が負担し、利用者が負担することはない。
しかし、国税の納付に関しては、手数料を利用者が負担することになる。
そのため、利用金額によっては、ポイント還元分より手数料の方が高くなってしまう。
国税のクレジットカード納付のメリットは、お得さというよりも利便性の方が強い。
クレジットカード納付の注意点
国税のクレジットカード納付のメリットとしては利便性が大きいが、その反面、注意すべき点もある。
手数料がかかる
クレジットカードでの支払いは、通常、一括払いであれば利用者側に手数料はかからない。通常、一括払いの際の手数料は加盟店が負担している。
しかし、国税のクレジットカード納付の場合、加盟店の立場にあたる国ではなく、利用者が手数料を負担する。
なお、この手数料は、国ではなく、納付受託者のトヨタファイナンスの収入となる。
手数料は10,000円ごとにかかり、以下のようになっている。
納付税額 | 決済手数料(税込) |
---|---|
1円~10,000円 | 83円 |
10,001円~20,000円 | 167円 |
20,001円~30,000円 | 250円 |
30,001円~40,000円 | 334円 |
40,001円~50,000円 | 418円 |
※以降、10,000円を超えるごとに決済手数料84円(税込)が加算される。
例えば100万円の納付税額の場合、8,360円(税込)が決済手数料になる。
還元率0.5%のクレジットカードで納付を行った場合、5,000円分はポイントで還元されるが、3,200円は負担しなければならない。
納税金額が小さい程、ポイント還元分に対する手数料の負担は大きくなる。
納税金額によっても変わるが、還元率1.0%のカードでポイント還元分が手数料をわずかに上回る程度、還元率1.5%のカードであればポイント還元分でやや得になる。
クレジットカード納付においてポイント還元で得をすることは期待できないと言えるだろう。
手数料が納税者負担になる理由
国税のクレジットカード納付において、納税者が手数料負担になる理由について、国税庁の「クレジットカード納付のQ&A」では、次のように説明されている。
・・・・・・納付受託者が国へ納付した後、利用者から代金が支払われるまでの間、一定のタイムラグが生じることとなり、納付受託者は貸倒リスクを負う一方、利用者は納付繰り延べなどの利益を得ることとなります。決済手数料は、このような納付受託者のリスクや利用者自身が享受する利益に対して納付受託者が決定しているものであることから、利用者自身がご負担していただく必要があります。
領収証書が発行されない
国税のクレジットカード納付では、領収証書が発行されない。
領収証書が必要な場合は、金融機関か所轄の税務署で納付を行う必要があるが、この場合はクレジットカード納付ができないので、現金納付となる。
納税証明書は発行されるが、発行までに3週間程度かかることもあり、急ぎの場合は間に合わない。
この他、納付を証明するものとしては、手続完了時の画面と、手続完了後に贈られてくる納付手続完了メールとがある。
念のため、この2つは保存しておくと良いだろう。
納付ごとに手続きが必要
クレジットカード納付が可能な地方税の場合、一度クレジットカードの情報を登録すれば、その後は自動的にクレジットカードでの納付になる。
しかし、国税のクレジットカード納付は、税金ごと、納付ごとに、その都度クレジットカード納付の手続きが必要だ。
特に地方税もクレジットカードで納付している場合は間違えやすいので注意しよう。
1回あたりの利用可能額
国税のクレジットカード納付では、1回あたり1,000万円未満(990万円以下)が上限となっている。
1,000万円以上の納付をクレジットカードで行いたい場合は、納付手続きを複数回行う必要がある。
また、クレジットカードの利用可能額にも注意が必要だ。
なお、1回の納付手続で複数のクレジットカードを利用することはできないが、納税額を分割して、各納付手続において違うクレジットカードを利用することは可能だ。
フィッシング詐欺など情報の流出
国税のクレジットカード納付は便利だが、インターネット上で手続きを行うということは、少なからず情報流出の危険がある。
今のところ被害はないが、国税庁では、詐欺サイトに誘導して情報を抜き取る「フィッシング詐欺」への注意喚起を行っている。
クレジットカード納付の際は、正しいURL「https://kokuzei.noufu.jp」かを必ず確認しよう。
クレジットカード納付のやり方
国税のクレジットカード納付には、まず、「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスする必要がある。
このサイトへのアクセス方法は次の通り。
- 国税庁ホームページ
- 確定申告書等作成コーナー
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)
国税クレジットカードお支払サイトにアクセスしたら、次の手順で納付を進める。
1. 利用者情報の入力
- 氏名、郵便番号、住所、電話番号、整理番号(空欄可)
- 納付先税務署
2. 納付内容の入力
- 納付税目を選択
- 課税期間、申告区分、納付税額
3. クレジットカード情報の入力
- カード番号、有効期限、支払方法、セキュリティコード
- 納付手続完了メールの送信先
4. 納付手続き完了
国税納付におすすめのカード
個人カード
国税のクレジットカード納付は、利便性重視で、ポイント還元によるお得さはあまり期待できない。
しかし、少しでも手数料負担をなくすために、還元率が高めのカードを利用することをおすすめする。
JCB CARD W
年会費無料で還元率2倍のお得なJCBカード
サービス、還元率、保険、サポートなどクレジットカードの機能をバランスよく備えている人気のカードである。女性にはJCB CARD W plus Lもおすすめ。
年会費 | 無料 |
---|---|
還元率 | 1.0%〜5.5% ※最大還元率はJCB PREMO(or nanacoポイント)に交換した場合 |
旅行保険 | 海外:最高2,000万円(利用付帯) |
電子マネー | QUICPay、Apple Pay |
国際ブランド |
楽天カード
楽天SPUで最大14倍還元。ポイントアップキャンペーンの多さも魅力
- 年会費無料、いつでも1%還元の高還元率
- 楽天市場なら常時3%還元
- ポイントアップキャンペーンを常時開催
- 楽天ペイなら1.5%還元
楽天経済圏の必須アイテム、カード所持だけで楽天グループの決済に+2倍される。海外保険も付帯。
年会費 | 無料 |
---|---|
還元率 | 1.0% |
旅行保険 | 海外:最高2,000万円(利用付帯) |
電子マネー | 楽天Edy |
国際ブランド |
リクルートカード
年会費 | 無料 |
---|---|
還元率 | 0.5%~1.2% |
旅行保険 | 国内:最高1,000万円(利用付帯) 海外:最高2,000万円(利用付帯) |
国際ブランド |
法人カード
国税のクレジットカード納付を行う場合、法人カードでは、そもそも国税納付に対応しているか、カード毎に確認が必要だ。
どの中でも、還元率が高めで国税納付でもポイントがきちんと付くことをうたっている「EX Gold for Biz」はおすすめ。
また、アメックスは、事前に口座に入金して承認を受けることで、限度額を無制限にすることができる。
EX Gold for Biz S/M
年会費 | 初年度無料 2年目以降:2,200円(税込) |
---|---|
追加カード | 無料(3枚まで) ※EX Gold for Biz Mのみ |
還元率 | 0.6%〜1.2% |
旅行保険 | 国内:最高1,000万円(利用付帯) 海外:最高2,000万円(自動付帯) |
アメリカン・エキスプレス・ビジネスカード
年会費 | 13,200円(税込) |
---|---|
還元率 | 0.33%〜1.0% |
ETCカード | 発行手数料無料 年会費:550円(税込) ※年1回以上の利用で翌年無料 ※5枚まで発行可能 |
旅行保険 | 国内・海外:最高5,000万円(利用付帯) |
クレジットカード納付は利便性が高い
国税のクレジットカード納付は、お得さはあまり期待できない。
しかし、納付がいつでもどこでもできる便利さや、支払いの猶予といったメリットがある。
金融機関や所轄の税務署は、対応時間が限られていたり、混雑したりで、忙しい時期には利用しづらい。
国税の納付に手間を感じていた人は、一度利用してみると良いのではないだろうか。
税目ごと、納付ごと、都度の手続きになるので、あまり向いていないと思えば、簡単に次から元の納付方法に戻せる。
国税庁では、国税のクレジットカード納付について、サイト上で丁寧に説明している。
不安な点があれば、こちらも参考にしてほしい。
個人カードの場合、5大国際ブランドすべてが利用可能なので、いつも使っているカードで問題なく納付ができる。
手数料負担を減らすために、できるだけ還元率の高いカードを使うと良いだろう。
法人カードの場合は、カードによって対応していなかったり、ポイント還元率が変わったりすることが多いので、利用前にカード会社に確認しよう。