日本の代名詞的存在である富士山。近年は国内のみならず、海外からの登山者も増えている。
富士山登山の所要時間はルートによって異なるが、目安として上りで6~8時間、下りで4~5時間かかる。
そのため、基本的に山小屋での宿泊が推奨され、日帰りの場合は早朝に登山を開始する必要がある。リスクの高い弾丸登山を規制するため、基本的に16時以降は山小屋の予約がないと登山できない。
富士山登山にかかる費用は、富士山保全協力金(1,000円)、山小屋宿泊代、トイレのチップ大、食事代、飲料水代など。
もっとも利用者が多い吉田ルートでは、通行料(2,000円)も必要だ。吉田ルートは一日の登山人数の制限もあり、事前の通行予約または山小屋予約が推奨される。
富士山での支払いには、クレジットカード払いなどのキャッシュレス決済による事前支払いができるものがある。また、現地でも一部キャッシュレス決済に対応しているものもある。
登山をスムースに行い、余計な現金を持ち歩かないためにも、事前支払いのできるものは事前に手続きを済ませておくことをおすすめする。
また、現地でもキャッシュレス決済が利用できる場面では積極的に利用したいところだが、富士山をはじめ山岳地帯ではクレジットカード、電子マネーといったキャッシュレス決済が利用できないことも多い。
これは、場所柄、安定的な電力の供給、電波通信を維持するのが難しいからだ。キャッシュレス決済に対応している場所でも、当日の状況次第で利用できなくなる可能性がある。
そのため、いずれにしても現金をある程度持って行ったほうが良い。とくに小銭を用意しておくことをおすすめする。
本記事では、富士山で必要な支払いについて詳細をまとめるとともに、キャッシュレス決済の対応状況についても解説する。
目次
富士山でお金を利用するシーンとキャッシュレス対応
「登山中にお金を払うシーンなんてほとんどないのでは?」と思う人もいるかもしれない。
しかし、前述の通り、富士山登山の場合はさまざまなシーンでお金を支払うことになる。
キャッシュレス決済の対応有無を含め、以下に詳しく紹介していく。
富士山保全協力金
富士山保全協力金は、富士山の環境保全や登山者の安全対策などを図るための制度だ。任意ではあるが支払うことをおすすめする。
基本は1,000円。富士山登山オフィシャルサイトでは「子どもや障害者は協力していただける範囲の金額」とされている。
登山時に現地で支払いをするか、事前にインターネットまたはコンビニエンスストアで支払いを行おう。
現地で支払いをする場合、以下のようにルートごとに受付場所と受付時間が異なる。現地での支払いは、現金のほか、主要国際ブランドのクレジットカードや交通系電子マネーを利用可能。
ルート | 受付場所 | 受付時間 |
---|---|---|
吉田ルート | 五合目(五合管理センター前) | 開山期間中24時間 |
六合目(安全指導センター手前) | ||
須走ルート | 五合目 | 開山期間中4時~21時 |
御殿場ルート | 新五合目 | 開山期間中4時~21時 |
富士宮ルート | 五合目 | 水ヶ塚駐車場 |
開山期間中4時~21時 | 開山期間中5時~21時 |
インターネット支払いを行う場合は、山梨県側(吉田ルート)と静岡県側(その他のルート)とで受付システムが異なるので注意しよう。クレジットカード決済が利用できる。
コンビニエンスストアで支払う場合は、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップを利用可能。
通行料(吉田ルート)
2024年のシーズンより、山梨県側の吉田ルートでは通行料2,000円の支払いが義務化された。前述の富士山保全協力金と合わせて、合計3,000円の支払いが必要になる。
支払いは吉田ルート五合目の登山道入口で行うか、事前の通行予約による事前決済を行う。
現地での支払いの場合、富士山保全協力金と同様にクレジットカードや電子マネー、QRコード決済が可能だ。事前決済は、クレジットカード決済が可能。
事前決済のシステムでは、通行料と富士山保全協力金を合わせて支払うことができる。
日帰りの場合は事前予約推奨
吉田ルートでは2024年のシーズンより、御来光を目指す登山客による夜間の混雑と危険な弾丸登山を防ぐため、1日の人数と時間を制限する登山規制が開始され、五合目登山入口ゲートが設けられている。
この規制では、山小屋に宿泊予約をしている人を除き、1日の登山者の上限を4,000人と定め、上限に達すると五合目から山頂方向へは通行できなくなる。そのため、山小屋の宿泊予約をするか、日帰りの場合は事前予約をおすすめする。
事前予約は登山日の前日、23時59分まで可能。当日受付分も1,000人以上確保されているとのことだが、いざ五合目まで行って通行できないという事態にならないよう、事前に手配しておいたほうが良いだろう。
また、午後4時~午前3時までの間は、五合目の登山道入口ゲートが閉鎖される。山小屋に宿泊予約がある場合は通行可能だが、日帰り登山客は山頂方向へ通行できない。
静岡県側も要事前手続き、夜間登山は非推奨
静岡県側の須走ルート・御殿場ルート・富士宮ルートでは通行料はかからないが、所定のシステムへの登山計画の登録と、富士登山のルール・マナーの事前学習(eラーニング)が推奨されている。
現地では係員が登録と事前学習済かどうかを確認し、確認が取れるとリストバンドが配布される。システム未登録の方は、各登山口五合目で、ルール・マナーの現地学習が実施される。
また、静岡県側でも午後4時以降の日帰り登山は避けるようにアナウンスされている。午後4時以降に登山を開始する場合、現地でのシステム認証時に、山小屋の宿泊予約の有無が確認される。
山小屋の宿泊料
富士山登山がはじめてだったり登山にあまり慣れていなかったりする場合はもちろん、無理なく登山を楽しみたい場合も、山小屋の利用をおすすめする。山小屋を利用する場合、必ず事前に予約してほしい。
山小屋の宿泊料は山小屋ごとに利用日や食事の有無によって異なるが、目安として1人1日当たり6,000~10,000円程度。
「富士山吉田口旅館組合」「富士山富士宮口旅館組合」の公式サイトで、それぞれの登山道にある山小屋の情報を確認できる。
予約方法は山小屋によって異なり、一部の山小屋はインターネット予約やキャッシュレス決済にも対応している。本記事でも、いくつかの山小屋の詳細を後述する。
トイレのチップ
富士山のトイレを利用する場合、チップとして1回あたり200~300円が必要になる。
環境を考えたバイオ式のトイレが一般的で、水洗トイレは基本的にないと考えた方がよい。
トイレに行く回数は人や気候によって異なるが、100円玉を多めに用意しておいたほうが無難だろう。
なお、チップはキャッシュレス決済に対応していないので注意が必要だ。
食事の購入費
山小屋の売店で食事を購入することができる。
街中のスーパーやコンビニよりも相場は圧倒的に高く、カップラーメンが400円、麺類が800円、ご飯類が1,200円程度となっている。
一部の山小屋ではキャッシュレス決済にも対応している。
飲料の購入費
富士山には自動販売機も設置されている。ただし、ペットボトルが5合目で200円程度、山頂付近で500円程度と高額になっている。購入は現金が基本。
登山に際してはあらかじめ飲み物を用意しておくべきだが、途中で足りなくなったなどの場合に備え、いざというときは自販機も利用できるよう小銭を用意しておくことをおすすめする。
山小屋のキャッシュレス対応状況
キャッシュレス決済に対応している富士山の山小屋を、登山口ごとに紹介する。なお、調査時点(2019年)から状況が変わっている可能性もあるため、利用の際は必ず公式情報を確認してほしい。
吉田口山小屋一覧
吉田口から登る際に、クレジットカードが利用できる施設は以下の通りだ。
佐藤小屋
五合目の駐車場から歩いて30分の場所に位置する山小屋。
クレジットカード、電子マネー各種対応している。
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
- American Express
- JCB
- Diners
- Discover
【電子マネー】
- Suica
- Toica
- manaca
- ICOCA
- iD
- QUICPay
里見平 星観荘
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
- JCB
鎌岩館
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
- American Express
- JCB
- Diners
- Discover
【電子マネー】
- Suica
- Toica
- manaca
- ICOCA
- iD
- QUICPay
本八合目富士山ホテル
8合目にある富士山ホテルはクレジットカードの利用ができる。
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
行く前に自分のカードのブランドをチェックしておこう。
富士山八合目 元祖室
8合目にある元祖室はクレジットカード払いに対応しており、
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
- American Express
- JCB
- Diners
- Discover
富士山七合目 富士一館
7合目にある富士一館では、クレジットカードが利用できる。
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
- American Express
- JCB
- Diners
- Discover
海抜一万尺 東洋館
最大320人を収容する大型の山荘で、クレジットカード払いにも対応している。
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
- American Express
- JCB
- Diners
- Discover
山小屋 白雲荘
8合目にある山荘、白雲荘はクレジットカード払いに対応している。
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
本七合目トモエ館
トモエ館では現地でクレジットカードを利用することはできないが、事前のネット予約の際にクレジットカード払いを選択することができる。
須走口小屋一覧
須走口から登る際にクレジットカードを利用できる施設は以下の通り。
東富士山荘
東富士山荘では、クレジットカードと交通系電子マネー、PayPayを利用することができる。
扱っているブランドに関しても一通りそろっているので、不便はないだろう。
【クレジットカード】
- Visa
- Mastercard
- American Express
- JCB
- Diners
- Discover
- 銀聯
【電子マネー】
- Suica
- Toica
- manaca
- ICOCA
- iD
- QUICPay
- REdy
- nanaco
- WAON
【スマホQR決済アプリ】
- PayPay
御殿場口山小屋一覧
残念ながら、御殿場口からの登山ルートでクレジットカード払いができる施設はまだないが、一部の山小屋でau PAYでの支払いが可能に。
赤岩八合館
標高3,300mの8合目付近に位置し、食事や売店での買い物をau PAYでの支払いが可能。
【スマホQR決済アプリ】
- au PAY
砂走館
標高3,090mの七合目付近にある山小屋。
食事や売店での買い物をau PAYでの支払いが可能。
【スマホQR決済アプリ】
- au PAY
天候と時期によっては利用できない場合も
電力や通信状況が不安定な山では、場合によってクレジットカード等のキャッシュレス決済の利用ができない場合がある。また、自動販売機やトイレのチップをはじめ富士山は基本的に現金中心の環境である。
できるだけ現金を持ち歩きたくないと思う人もいるかもしれないが、いざという時に現金がないと困る事態も考えrあれるため、富士山登山においては現金(とくに小銭)を多めに持っておくことをおすすめする。
合わせて、事前に決済できるものは事前に手続きをしておこう。
また、本記事でも紹介している通り、2024年シーズンから富士山登山にはいくつかの規制が設けられている。利用を考えているルートの規制について、本記事と合わせて富士山登山オフィシャルサイトなどで確認をして、必要な手続きを行おう。