ライフカードと東京都の総合病院である厚生中央病院は6日、医療機関で会計の待ち時間を短縮する「エクスプレス会計」の会員募集を開始すると発表した。
エクスプレス会計とは、提携クレジットカードを診察券と一緒に提示することで、診療終了後に待ち時間ゼロで帰宅できるシステムだ。
募集が開始された「エクスプレス会計提携クレジットカード」を発行することで、厚生中央病院にて利用できるようになる。
クレジットカードの概要は以下のとおりだ。
年会費 | 初年度無料、次年度以降1,375円(税込) ※年に1回、ショッピング(診療費含む)の利用があれば次年度以降も無料 |
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ブランド | Mastercard |
付帯保険 | 国内・海外旅行傷害保険、シートベルト保険 |
入会条件 | 18歳以上(未成年は親権者の同意が必要) |
年に1回利用で年会費は無料となるので、実質年会費無料なのは嬉しいポイント。
特典としてライフサンクスポイントによる還元も付くが、還元率は未発表だ。
ライフカードと同じであれば、基本還元率0.5%となる。
なお、これまでにエクスプレス会計機能付きのクレジットカードは2枚発行されており、今回で3枚目となる。
以下の医療機関で、すでにエクスプレス会計提携クレジットカードが発行されている。
- 東京大学医学部附属病院:ゆーとむカード
- 慶應義塾大学病院:KEIO MED EXPRESS CARD
エクスプレス会計の概要とメリット
エクスプレス会計は診察後に待つことなく帰宅できるシステム。
提携クレジットカードを受付で診察券と共に提示することで、手続きが行われる。
混雑していても支払い待ちの必要がなく、診察後すぐに帰宅できるのが最大のメリットだ。
さらに、クレジットカードよりもスピーディーに精算でき、結果として全体の会計時間も大幅に短縮可能。
会計窓口や自動精算機の混雑緩和にもつながる。
また、メリットがあるのは患者側だけでなく、病院側にとっても同様だ。
会計の収納事務や窓口でのやり取りなどの手間がなくなるため、業務効率をアップさせることができる。
現金払いによるヒューマンエラーが防止できることも、メリットといえるだろう。
病院ごとに提携カードを持つ必要がある
エクスプレス会計システムにはメリットばかりではなく、問題点もある。
それは「患者が病院ごとに提携カードを使い分ける必要がある」という点だ。
多くの人は、通常行きつけの病院ひとつでカードを作れば済む。
しかし、引っ越しなどさまざまな事情で複数の病院に通院するユーザーもいる。
そういった場合、エクスプレス会計を使おうとすると「カードを作り直す」手間が生じる。
将来的にエクスプレス会計を普及させていく場合、この点にどう折り合いをつけていくかが懸念されるだろう。
料金後払いシステムとの比較
なお、本サイトでは7月11日に「クレジットカードを利用して医療機関の会計待ち時間をゼロにするシステム」について報じている。
企業向け自動サービス機器などの製造・販売を手がけるグローリーが開発した本システムは、「エクスプレス会計」と目的を同じくするものだ。
こちらのシステムの場合は、病院側であらかじめ契約しているクレジットカードブランドが利用できるため、提携カードを新たに発行する必要が無い。
さらに、カード決済だけでなく口座振替、コンビニ払いも利用できるため、こちらの方が利便性は高いと言える。
気になるのは導入コストだが、そのあたりは一般向けに情報公開されていないため比較できない。
が、展開スピードでは理論上、「料金後払いシステム」の方が早いと予想できる。
厚生労働省が5月29日に発表した「医療施設動態調査(平成30年2月末概数)」では、一般病院の数は7,342。
提携カードを都度発行していくエクスプレス会計の仕組み上、この数をカバーしていくことは非常に難しいだろう。
現状では、患者目線で「料金後払いシステム」のほうに軍配が上がるのではないだろうか。
提携クレジットカードの特徴を活かした展開に期待
一見すると上述した「料金後払いシステム」に軍配があがる。
しかし、エクスプレス会計には提携クレジットカードを発行するという特徴がある。
例えば、東京大学医学部附属病院の「ゆーとむカード」は、将来的に
・ICチップと電子カルテを連携させることで診療情報をどこでも閲覧できるようになる
・インターネットを利用した診療予約サービス
・会員向け健康セミナーの案内
などの展開も予定されており、これは「料金後払いシステム」にはない活用法だ。
個人がカードを新しく発行することによって「医療データの保存」など新しいサービスが考えられるのがメリットといえる。
もし、エクスプレス会計のカードが将来的に統合されれば、これは医療業界に大きな変革をもたらすのではないだろうか。