今回はクレジットカードブランド「アメリカン・エキスプレス」(以下 アメックス)の歴史を徹底的に掘り下げて紹介していく。
今や世界的なクレジットカード会社として確固たる地位を築き上げており、「アメックス」の愛称でも知られるアメリカン・エキスプレス。
同社のゴールドカードと言えばステータスの象徴として知られ、憧れている人も多いのではないだろうか。
そんな同社には意外な成り立ちがあることをご存知だろうか?
目次
アメリカン・エキスプレスの成り立ち
アメックスは”T&E(トラベル&エンターテインメント)企業”であるという自社への強いブランド意識をもっており、その点で他のクレジットカード会社とは一線を画している。
そのブランド意識が生まれた理由は同社の成り立ちにあるといえるだろう。
1850年に運送業として創業
ブランド名の中に「エキスプレス(=急行便、速達便)」が入っているのはたまたまではなく、元々は1850年に運送業として創業したのが始まりだ。
当時のアメリカとえいば、1848年にカリフォルニア州で砂金が見つかったことをきっかけに、大勢の人が一攫千金を夢見て西部を目指す「ゴールドラッシュ」の真っ只中だった。
初代社長のヘンリー・ウェルズ、ウィリアム・ファーゴ、ジョン・バターフィールドの3人が共同出資をして合資会社のアメリカン・エキスプレスが誕生した。
そして、社名の通り「エキスプレス=急行便」を利用した貨物輸送を開始し、ゴールドラッシュという時代背景も合わさり、会社は順調に成長した。
ちなみに、当時では珍しかった運搬物に対しての「保証サービス」が抜群の支持を受けて、成長の起爆剤になったといわれている。
この時点ですでにT&E企業としてのブランド意識が垣間見える。
金融業や旅行業への進出
ゴールドラッシュに合わせて成長した運送業だけにとどまらず、その後は1882年に世界初の「マネー・オーダー」*1 サービスを開始し、これをきっかけに金融業界への進出を果たした。
また、1891年には「トラベラーズ・チェック」*2 を発行し、現金を持ち歩かずに旅行ができるという、利便性と安全性を兼ね備えたシステムを打ち出した。
これにより、金融業界に続き旅行業界にも進出を果たした。
アメックスはトラベラーズ・チェックの取扱高で長年首位を独占し、旅行業と金融業において大きな成功を収めたといえる。
クレジットカード業界へ進出
1958年にはアメリカホテル組合のクレジットカード会社を買収し、アメリカとカナダでクレジットカードの発行を開始した。
また、今から丁度100年前の1917年に日本初の営業所を横浜に設立し、日本への進出を果たしている。
ただ、当時日本において力を入れていたのは「旅行業」であり、訪日外国人のサポートがメインだったといわれている。
現在ではアメックス=クレジットカードブランドというイメージが強いが、クレジットカードの発行は創業から100年以上経過してからなのだ。
つまり、アメックスは運送業や旅行業としての歴史の方が長い会社であるといえる。
以下はアメックスカードの歴史と貴重な当時のカード画像だ。
1958年
はじめてのアメリカン・エキスプレス・クレジットカード
はじめて発行されたアメックスのクレジットカード。
10月から年末の3ヶ月間で50万枚が発行された。
1959年
アメリカン・エキスプレスが業界初のプラスチックカードを導入
クレジットカード業界に進出してから8ヶ月で偽造難しいとされるプラスチックカードを他社に先駆けて導入した。
1966年
米国ではじめてコーポレート・カードを導入
初の法人向けカードを米国にて導入した。
1966年
米国ではじめてゴールド・カードを導入
ゴールド・カードと呼ばれる以前は、「エグゼクティブ・カード」と呼ばれていた。
1969年
現在のアメリカン・エキスプレス・カードの誕生
「グリーンカード」の名称で知られている本カードは米国紙幣と同じ緑色を採用している。
クレジットカードブランドとしてのアメックスの歴史
アメックスの発行するクレジットカード(通称「アメックスカード」)は現在においても根強いステータス性を誇っている。
そして、一昔前の日本におけるアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード(通称「アメックスゴールド」)のステータス性は驚異的だったといえる。
では、何故アメックスゴールドがステータスの象徴だったのかを掘り下げていこう。
初めて発行されたゴールドカード
あまり知られていないことだが、アメックスが日本で最初に発行したのは「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」である。
具体的には以下のような順でアメックスカードが発行された。
□1980年:アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードを日本で発行
□1983年:アメリカン・エキスプレス・カード(通称「アメックスグリーンカード」)を日本で発行
□1993年:プラチナ・カードを日本で発行
アメックスゴールドが発行された1980年といえば、日本はバブル期に突入したばかりで、持ち物や服装などのステータス性を強烈に意識していた時期といえる。
そこへ、他社がまだ発行していなかった「ゴールドカード」を発行したことで、新たな価値を生み出し爆発的な人気を獲得し、「アメックスゴールド=ステータス」という風潮が広がったのだ。
また、現在では各社がゴールドカードを発行しているが、これはアメックスの戦略を各社が取り入れた結果だといえる。
ちなみに、「プラチナ・カード」はアメックスが商標登録をしており、ゴールドカードと同じく他社に先駆けて打ち出したビジネス戦略だ。
逆に、「プラチナカード」はアメックスの登録商標ではないため、一般的なプラチナカード全般を指す場合は、こちらの言葉が使用される。
2000年にJCBと提携
アメックスは上記で紹介したように米国のクレジットカードブランドだ。
そのため、一昔前の日本における使い勝手でいえば、他社のカードの方が優れていたといえる。
アメックスの加盟店ではないためカードが使えないことや、加盟店ではあるもののアメックスは手数料が高いから他のブランドのカードにして欲しいと言われることがあったという。
しかし、そんな状況を打破するため、アメックスは日本において最大級の加盟店網を持つJCBと提携し、JCBが使える店舗であればアメックスが使えるという状況を作り出したのだ。
さらに、現在ではアメックスとJCBは「加盟店相互解放」関係にあり、海外のアメックス加盟店ではJCBカードが使えるという相互にとってメリットのある関係を作り上げている。
このような動きは、加盟店網を広げて収益を拡大するという目的の他に、T&E企業としてより多くの人に快適な旅や旅先での生活を送って欲しいという願いの表れなのではないかと考えられる。
有事対応の歴史
公式なサービスではないが、旅行業や金融業、クレジットカード会社といった枠を超えた有事対応には企業としての姿勢が表れている。
代表的な有事対応には以下がある。
1989年6月4日-天安門事件
中国の民主化に向けて国民が発起し、それに対して軍が無差別攻撃を開始した。
結果、死者は10万人規模となり、戒厳令が発令され、多くの外国人が中国国内に取り残された。
そこへアメックスがあらゆる手段を駆使して、旅行者やビジネスマンが中国から脱出するのをサポートした。
2001年9月11日-アメリカ同時多発テロ
アメリカのワールド・トレードセンターにハイジャックされた飛行機が衝突し、大きな被害を受けた。
アメックスの本社も周辺にあり、同社の社員も数多く犠牲になった。
しかし、混乱の最中でも通常変わらないサービスを提供し続けた。
2011年3月11日-東日本大震災
東北地方太平洋沖地震発災直後、被災地域周辺に住むカード会員全員に電話を掛け安否確認を行った。
また、トイレットペーパー・ガソリン・ランドセル・ぬいぐるみ等を無償で提供した。
上記の対応が「クレジットカード会社の付帯サービス」としての域を遥かに超えており、アメリカン・エキスプレスがユーザーの安全や安心に最大級の配慮をしていることがよくわかる。
近年のアメックスの動き
ここまではアメックスの歴史を振り返ってきたが、最後に近年の動向についてもみていこう。
2017年3月に「Apple Pay」に対応し、ユーザーのニーズにいち早く応えたことは記憶に新しい。
また、2017年11月には仮想通貨「XPR」で知られるリップル社との提携を発表し、仮想通貨業界に新たな変化をもたらした。
さらに、2017年12月11日には、2018年4月から「全世界のアメックス加盟店でサインの記入を不要にする」という発表を行い、さらなる変革の時を迎えようとしている。
2020年には、アメックスのタッチ決済の利用を促進する動きもあった。
アメックスの歴史と今後の動向をみる際には、ただのクレジットカードブランドではなく、T&E企業としてどのような意図があるのかを考えてみるといいだろう。
*1
マネー・オーダーとは郵便為替のことで、簡単にいえば「送金システム」のことである。
日本でも郵便局で取り扱われており、少額の送金に便利なシステムだ。
*2
トラベラーズ・チェックとは旅行小切手のことで、あらかじめ小切手を購入しておいて、 その小切手を使い旅行先での支払いを行うシステムだ。
現金を持ち歩いての海外旅行はリスクが高いため、安全のためにトラベラーズ・チェック を利用することもあった。
日本国内では2014年3月31日をもって全ての販売が終了している。
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