小田急バスが、2029年度までに一般路線バスで現金による運賃の支払いを終了する方針を打ち出した。代わりに、交通系ICカードに加えてクレジットカード等のタッチ決済で乗れる「クレカ乗車」を一般路線バス全台(約500台)に広げる。
小田急バスの一般路線バスは2029年度までに現金が使えなくなる見通し
三井住友カードは2026年10月20日、小田急バスで「クレカ乗車」サービスの導入対象を拡大すると発表した。小田急バスは一般路線バスの完全キャッシュレス化を目指しており、2026年度後半から車載運賃箱の改修作業に着手する。最終的には2029年度までに、一般路線バスでの現金取扱の終了を目指すとしている。
読者にとって最も大きな変化は、この「現金取扱の終了」だ。これまで小銭や千円札で運賃を払っていた人は、2029年度までに交通系ICカードかタッチ決済対応のカードなど、現金以外の支払い手段を用意する必要が出てくる。運賃箱の改修は2026年度後半から始まり、一般路線バス全台への導入も「順次」とされているため、路線や車両によって切り替わる時期が異なる可能性がある。
小田急バスの調べによると、2025年度の一般路線バスの運賃支払のうち、現金は約4%にとどまる。大半の利用者はすでに交通系ICカードなどで乗っていることになるが、残りの約4%の人にとっては乗り方そのものが変わる発表といえる。

現金をやめる理由は運賃箱のコストと停車時間
小田急バスは、現金による運賃収受には運賃箱の保守・点検、釣銭準備金の確保、売上金の回収・精算といったコストが継続的にかかっていると説明している。また、現金での釣銭の払い出しや、交通系ICカードへの車内チャージを行う際には停留所での停車時間が長くなり、運行の定時性に影響することがあるという。
現金をなくすことで乗降時間を短くし、運行コストを抑えて定時性を高めることが狙いだ。小田急バスは、こうした取り組みを地域の移動を支えるバスサービスの持続性向上につなげるとしている。
クレカ乗車は三井住友カードの「stera transit」を使ったタッチ決済乗車
クレカ乗車は、三井住友カードの公共交通機関向けソリューション「stera transit」を活用した乗車サービスだ。タッチ決済に対応したクレジットカード・デビットカード・プリペイドカード、またはカードを設定したスマートフォン等を、車内の専用端末にかざすだけで乗車できる。
交通系ICカードとの大きな違いは、事前のチャージや専用アプリの準備がいらない点だ。普段の買い物で使っているタッチ決済対応のカードがそのまま乗車券代わりになるため、残高不足を気にする必要がない。stera transitは、三井住友カードがGMOペイメントゲートウェイ・GMOフィナンシャルゲートおよびVisaと共同で構築した事業者向け決済プラットフォーム「stera」と、国際ブランドの非接触決済「タッチ決済」を組み合わせた仕組みである。
一定金額を超える支払いは暗証番号などが必要
タッチ決済は、対応端末にカードやスマートフォンをかざすだけで、サインも暗証番号の入力もなく支払いが完了する。ただし、一定金額を超える支払いでは、カードを挿入して暗証番号を入力するか、サインによる本人確認が必要になる。
クレカ乗車を使うには、手持ちのカードがタッチ決済に対応している必要がある。対応カードを持っていない場合は、交通系ICカードを用意するのが現実的な選択肢になる。
空港連絡バスとみたかシティバスでは2024年3月から導入済み
小田急バスでは2024年3月から、次の路線で順次クレカ乗車を提供してきた。
- 空港連絡バス(吉祥寺駅・新百合ヶ丘駅~羽田空港線)
- みたかシティバス(三鷹の森ジブリ美術館ルート)
これらの路線では、事前のチャージや乗車券の購入なしにクレジットカード等で乗れる点が、訪日外国人を含むさまざまな利用者のニーズに合うものとして評価されてきたという。乗務員にとっても、現金対応や案内にかかる負担の軽減につながったとしている。
今回の発表は、こうした観光・空港向け路線での実績を踏まえ、日常の通勤・通学や買い物で使われる一般路線バスへ対象を広げるものだ。クレカ乗車が一部の特別な路線のサービスから、普段の生活の足の標準的な乗り方へと位置づけが変わることになる。
交通系ICカードは引き続き使え、クレカ乗車との使い分けが選択肢に
小田急バスは、交通系ICカードに加えてクレカ乗車などの決済手段を整備するとしている。現金がなくなっても交通系ICカードはこれまでどおり使えるため、すでにICカードで乗っている人の乗り方は変わらない。
一方、交通系ICカードへの車内チャージは、停車時間が長くなる要因の一つとして挙げられている。現金の取扱を終了すれば、現金を使った車内でのチャージもできなくなると考えられる。車内チャージに頼っている人は、駅やコンビニなどでのチャージ、あるいはクレカ乗車への切り替えを検討しておくとよいだろう。
交通系ICカードとクレカ乗車のどちらを使うかは、利用スタイルによって変わる。電車とバスを同じ1枚で乗り継ぎたい人や、残高管理に慣れている人は交通系ICカードが手軽だ。一方で、チャージの手間をなくしたい人や、たまにしかバスに乗らない人は、普段使いのタッチ決済対応カードで乗れるクレカ乗車が便利だろう。なお、今回の発表ではクレカ乗車時の運賃や割引、ポイント付与の扱いについては触れられていない。
現金でバスに乗っている人は2029年度までに支払い手段の準備を
今回の発表で最も影響を受けるのは、小田急バスの一般路線バスを現金で利用している人だ。2029年度までの段階的な移行とはいえ、運賃箱の改修は2026年度後半から始まるため、早めに交通系ICカードかタッチ決済対応のカード・スマートフォンを用意しておくと、切り替え時期に慌てずに済む。
家族に現金でバスを利用している高齢者や子どもがいる場合は、交通系ICカードを持たせる、タッチ決済対応のカードを準備するなど、本人に合った方法を一緒に考えておきたい。クレジットカードを持たない人でも、タッチ決済対応のデビットカードやプリペイドカードでクレカ乗車を利用できる。
三井住友カードは、stera transitを今後も全国各地で導入する予定としている。路線バスで現金が使えなくなる動きが小田急バス以外にも広がるかどうか、引き続き注目したい。

















