暗号資産交換業を営むSBI VCトレードが、円建てのステーブルコインを使った新しい資産形成の選択肢を打ち出した。決済の裏側で語られることの多いステーブルコインが、身近な「預ける・貸す」の文脈に入ってくる動きである。
円建てステーブルコイン「JPYSC」を貸して利用料を得る仕組み
SBI VCトレードは、SBIホールディングスの連結子会社で、国内で唯一、一般利用者向けにステーブルコインの流通・取引を扱える電子決済手段等取引業者のライセンスを持つ。今回始める「JPYSCレンディング」は、信託型の円建て電子決済手段(ステーブルコイン)である「JPYSC」を利用者が同社に貸し出し、その対価として利用料(賃借料)を受け取る仕組みだ。信託型のステーブルコインを対象としたレンディングは国内初としている。
JPYSCは日本円に連動する円建てのステーブルコインであるため、ビットコインなどの暗号資産や米ドル建てステーブルコインと違い、為替や価格の変動リスクを気にせず扱いやすいのが特徴とされる。貸し出している間に特別な手続きは必要なく、満期になると貸した数量に利用料を上乗せしてJPYSCで返還される。
当初年率3%、円定期預金を上回る想定水準
最大の訴求点は利回りの高さである。サービス開始を記念した当初募集は、12週間満期で年率3%に設定される。通常時も12週間満期で年率1〜3%程度を予定しているという。同社は、一般的な円定期預金の年率を0.325〜1%程度(優遇時で1〜2%)とし、これを上回る水準になると説明している。
| 項目 | JPYSCレンディング(12週間満期) | 円定期預金(3か月満期) |
| 想定年率 | 当初年率3%(通常時は年率1〜3%程度予定) | 年率0.325〜1%程度(優遇時1〜2%) |
なお年率はマーケット環境によって変動し、状況に応じて新規募集を停止することがあるとしている。あくまで「預金」ではなく貸出取引である点は、後述のリスクとあわせて理解しておきたい。
少額なら確定申告が不要になる場合がある
税金の扱いも定期預金とは異なる。円定期預金の利息は、所得に関係なく一律20.315%の源泉分離課税となる。一方、JPYSCレンディングで得た収益は雑所得として総合課税の対象になる。
| 税区分 | JPYSCレンディング:総合課税(雑所得) | 円定期預金:源泉分離課税 |
| 税率 | 所得によって異なる(年20万円を超える場合の最大税率は所得税・住民税あわせて最大55.945%) | 一律20.315% |
会社員などで、年間の雑所得が20万円以下かつ他に雑所得がないといった一定の条件を満たせば、確定申告の対象にならないケースがある。少額から試したい人にとっては始めやすい面がある一方、収益が大きくなると総合課税で税負担が重くなる可能性もある。自分の所得状況によって扱いが変わるため、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談するのがよいだろう。
「預金ではない」知っておきたいリスク
高い年率の裏側には、定期預金にはないリスクがある。JPYSCレンディングは円預金ではなく、預金保険制度の対象ではない。つまり、銀行預金のように一定額まで保護される仕組みはない。
さらに、貸出期間中の中途解約は原則としてできない。満期まで資金(JPYSC)を動かせないため、当面使う予定のないお金でなければ向かない。加えて、同社が破綻した場合には、貸し出したJPYSCの全部または一部の返還を受けられないリスクがあるとされる。借り入れたJPYSCが資金決済法上の分別管理の対象外となるためだ。JPYSC自体も日本円そのものではなく、国がその価値を保証しているわけではない点も押さえておきたい。
申込開始は7月16日、レンディング開始は7月23日
本サービスの申込開始日は2026年7月16日(木)で、実際のレンディング開始日は7月23日(木)となる。あわせて、開始を記念したJPYSCのプレゼントキャンペーンも実施される。
利回りだけを見れば魅力的に映るが、途中で引き出せない資金拘束や預金保険の対象外である点など、定期預金と同じ感覚で捉えると見落としがちな条件が複数ある。円建てステーブルコインという新しい選択肢に興味がある人は、こうしたリスクを理解したうえで、まずは少額から試すかどうかを見極めるとよいだろう。















