楽天ウォレットは2026年10月14日、現物取引と証拠金取引を1つにまとめた新アプリ「楽天ウォレット」の提供をAndroid版から開始した。既存の利用者にとっては、旧アプリの提供終了に向けた移行とパスキーの設定が必要になる点が最も実務的な影響である。
「暗号資産取引」と「証拠金取引」の2アプリを「楽天ウォレット」に統合
楽天ウォレット株式会社はこれまで、現物取引用の「暗号資産取引」アプリと、証拠金取引用の「証拠金取引」アプリを別々に提供していた。今回この2つを統合・リニューアルし、1つのアプリで現物取引と証拠金取引の両方ができるスマートフォン向けアプリ「楽天ウォレット」として提供を始めた。
あわせてアプリのアイコンを刷新し、ブランド名称とアプリ名称を「楽天ウォレット」に統一した。現物と証拠金の資産を1つのアプリで一元管理できるようになるため、両方の取引をしている利用者はアプリを切り替える手間がなくなる。
新アプリの特徴として、同社は次の4点を挙げている。
| 操作性 | 現物取引も証拠金取引も、シンプルな画面で投資がはじめての人でもわかりやすい操作性 |
| AIコンシェルジュ | 暗号資産の状況やアプリの操作方法などを、いつでも「AIコンシェルジュ」に聞ける |
| 楽天ポイント併用 | 現物取引は、現金と「楽天ポイント」を併用して暗号資産の購入が可能 |
| ログイン | 「パスキー認証」のみ |
このほか、重要な価格変動を知らせる通知機能も実装された。
旧アプリは2027年初頭を目途に終了、iPhoneはiOS版の提供待ち
既存の「暗号資産取引」アプリと「証拠金取引」アプリは、2027年初頭を目途に提供を終了する予定だ。同社は利用者に対し、順次新アプリへの移行を依頼するとしている。なお、証拠金取引のWeb版はリニューアル後も引き続き利用できる。
注意したいのは、新アプリが現時点ではAndroid版のみという点である。iOS版は後日提供開始予定とされており、具体的な時期は示されていない。iPhoneで楽天ウォレットを使っている人は、iOS版が出るまで旧アプリを使い続けることになる。旧アプリの終了は「2027年初頭を目途」とされているため、iOS版の提供開始後は早めに移行しておくと安心だろう。
新アプリへのログインはパスキー認証が必須
新アプリではログイン方法が「パスキー認証」のみとなり、パスワードによるログインはできない。パスキーは端末の生体認証などを使ってログインする仕組みで、パスワードを入力する必要がないうえ、不正アクセスに強いとされる。
利便性と安全性が上がる一方、移行時にはパスキーの設定が前提になる。暗号資産は不正ログインによる流出の被害が大きくなりやすい資産であり、パスワードの使い回しなどによるリスクを減らせる点は利用者にとってのメリットといえる。
楽天ポイント(通常ポイント)と現金を組み合わせて購入できる
楽天ウォレットはこれまでも、現物取引で楽天ポイント(通常ポイント)と暗号資産の交換サービスを提供していた。今回このサービスを拡充し、現金と楽天ポイントを併用して暗号資産を購入できるようになった。
たとえば、買いたい金額のうち手持ちのポイントで足りない分を現金で補う、といった使い方ができる。ポイントだけ、現金だけという二択ではなくなり、予算に合わせて少額から購入しやすくなるのが今回の変更の意味である。
ただし、一次情報で対象として明記されているのは「通常ポイント」である。期間限定ポイントの扱いについてはプレスリリースでは触れられていないため、期間限定ポイントの消化先として使えると考えるのは早計だろう。
また、ポイントで購入した暗号資産も、現金で購入したものと同様に価格変動の影響を受ける。ポイントを暗号資産に換えた時点で、その価値は相場次第で増えも減りもする資産になる点は理解しておきたい。
AIコンシェルジュは「投資判断の支援」ではなく情報提供の機能
新アプリには、楽天ウォレットのAIアバターが暗号資産取引に役立つ情報を提供する「AIコンシェルジュ」機能が搭載された。同社のシニアアナリスト・松田康生氏の知見を学習しており、専門用語やアプリ操作の疑問に対話形式で24時間回答するという。
同社が2025年6月に実施した調査では、9割以上が「興味はあるが、難しそうで何から学べばいいかわからない」「情報収集が面倒」と回答したとしており、こうした初心者層の取り込みが狙いとみられる。
一方で、同社はAIコンシェルジュについて「投資判断を支援するものではなく、市場情報やサービス利用に関する情報提供を行う機能」と注記している。用語の意味や操作方法を調べる道具としては便利だが、売買の判断そのものをAIに委ねるものではない点は押さえておきたい。
暗号資産の価格変動と証拠金取引のコスト・リスク
アプリが使いやすくなっても、暗号資産そのもののリスクは変わらない。暗号資産は法定通貨ではなく、価格変動などにより損失が生じることがある。
証拠金取引は損失が証拠金を上回るおそれがある
新アプリでは現物取引と同じアプリから証拠金取引にもアクセスできるようになるが、証拠金取引は預けた証拠金の額を上回る取引ができる仕組みで、損失額が証拠金を上回るおそれがある。必要証拠金は建玉金額の50%以上とされており、手元の証拠金の最大2倍相当まで取引できる計算になる。
さらに証拠金取引では、建玉管理料が最大0.04%/日かかる。日割りでは小さく見えるが、建玉を長く持ち続けるほど負担は積み上がり、単純計算で1年間保有すると最大14.6%に相当する。保有期間が長くなるほどコストがかさむ点は理解しておきたい。
売買価格の差(スプレッド)も実質的なコスト
暗号資産の取引では、売付価格と買付価格の間に価格差(スプレッド)がある。購入した直後に売却すると、このスプレッドの分だけ損をする構造であり、表に出る手数料とは別の実質的なコストになる。ポイントを使った少額購入でも、このコストは発生する。
新アプリの影響が大きいのはどんな人か
最も影響が大きいのは、現在「暗号資産取引」アプリや「証拠金取引」アプリを使っている既存の利用者である。2027年初頭を目途とした旧アプリの終了までに、新アプリへの移行とパスキーの設定が必要になる。Androidユーザーはすでに移行でき、iPhoneユーザーはiOS版の提供開始を待つことになる。
楽天ポイントの使い道を広げたい人にとっては、通常ポイントと現金を組み合わせて暗号資産を購入できるようになった点が選択肢の1つになる。ただし、ポイントを暗号資産に換えれば価格変動のリスクを負うことになるため、仕組みとリスクを理解したうえで判断したい。















