クレジットカードがどこの店で使えるかは、そのカードの国際ブランドが何かによって決まる。
国際ブランドの世界シェア1位がVISAだということは、多くの人が知るところだろう。
2015年のニルソンレポートによると、世界全体の総購入取引件数における国際ブランドの大まかなシェア率は以下の通り。
- VISA・・・56%
- Mastercard(マスターカード)・・・26%
- 中国銀聯(ぎんれん)・・・13%
- American Express(アメックス)・・・3%
- JCB・・・1%
- Diners Club・・・1%
数字で見ても、VISAが圧倒的なシェアを誇ることがわかる。
しかし、海外のクレジットカード・デビットカード事情にまで詳しいという人は少ないことだろう。
本記事では、国際ブランドの詳細な海外シェアやデビットカードの普及率について紹介する。
日本におけるカード決済の実状との違いがわかってもらえるはずだ。
世界のクレジットカード利用状況
旅行やビジネスで海外を訪れる際、多額の現金を持って行くことに対して、紛失や盗難のリスクを感じる人も多いのではないだろうか。
また、まだまだ現金主義の抜けきらない日本に住んでいると、海外のクレジットカードの利用率に驚くこともあるだろう。
韓国、中国、アメリカをはじめとする諸外国では、日本よりも遥かにクレジットカードの利用率が高い。
日本もクレジットカードの保有率こそ低くないが、利用率が圧倒的に低い。
日本人がクレジットカードを使わない理由としては、セキュリティ面への不安や現金への信頼が挙げられる。
クレジットカードの普及が進んだ国では、少額の買い物でもカードによる決済が盛んであることも珍しくない。
韓国は世界一のクレジットカード大国
現在、クレジットカード決済比率で世界1位は韓国だ。
韓国でこれだけクレジットカードが広がったのには理由がある。
1999年、個人消費と小売店の脱税防止を目的に、韓国政府によるクレジットカード奨励策が打ち出されたのだ。
利用額に応じた控除や、カードの領収書に宝くじをつけるなど、利用者にとって明確なメリットが用意されていた点が特長的だと言える。
コンビニや個人商店などでも、数百円単位の買い物からクレジットカードで支払えることが多い。
データで見るクレジットカードの取引件数
まずは世界的なクレジットカード取引について見ていこう。
世界的なクレジットカード取引、およびモバイル決済の情報ソースとして信頼性が高いのが、専門誌「The Nilson Report(ニルソンレポート)」だ。
同誌では、クレジットカード以外にも、プリペイドカードやデビットカードでの取引もカウントしている。
世界的なクレカ取引件数は増加している
ニルソンレポートには、2015年における世界の加盟店取引についての報告もある。
同誌によると2015年の加盟店取引件数は2,770億8,000万件となり、前年と比べて約16.1%増加したとのことだ。
世界的にクレジットカードの取引件数が、1年で大幅に増えていることがわかる。
国際ブランドはVISA、マスターが圧倒的
次に、国際カードブランド、決済種別における取引件数のシェアを、以下の表で見てみよう。
国際ブランド | 決済種別 | 占有率 |
---|---|---|
VISA | クレジットカード | 35.5% |
デビットカード | 20.02% | |
マスターカード | クレジットカード | 13.14% |
デビットカード | 13.13% | |
中国銀聯 | クレジットカード | 6.79% |
デビットカード | 6% | |
アメリカン・エキスプレス | クレジットカード | 3.21% |
JCB | クレジットカード | 1.23% |
ダイナース/ディスカバリー | クレジットカード | 0.98% |
シェアトップを獲得したのがVISAで、クレジットカードとデビットカードの合計は約55%。
VISAだけで全体の半数以上を占めていることがわかる。
VISAに次ぐのがマスターカードで、クレジットカードとデビットカードの合計シェアが約26%である。
VISAとマスターを合計すると、全体の4分の3を占めるのだから驚きだ。
世界中で高いシェアを誇る2ブランドのため、海外へ旅行や出張で行く場合は、いずれかのブランドのカードを持っておこう。
日本での利用においても、VISAかマスターカードで困る場面は少ない。
最初に作るクレジットカードは、VISAかマスターカードにしておくのが最も無難な選択と言えるだろう。
デビットカード、プリペイドカードの利用が増加
取引件数のシェアをあらわした表の中で、クレジットカードに迫るデビットカードの占有率が気になった人もいるかもしれない。
日本人にとってあまり馴染みのないデビットカードだが、海外では非常に多くの人に利用されている決済手段だ。
デビットカードは銀行口座と紐づけられており、利用するとその場で口座から利用分が引き落とされる。
クレジットカードと違い、カード会社が立て替える必要がないため、審査がなく簡単に作りやすい。
また、口座から即引き落とされることから、使いすぎを防ぐことができ、お金の管理がしやすいというメリットもある。
以上のような理由から、アメリカやイギリス、中国をはじめ多くの国で普及しているのだ。
以下の表は各国際ブランドで、デビットカードの決済手段の利用割合を示している。
どの国際ブランドでもデビットカードの利用が増加していることがわかる。
国際ブランド | 2014年 | 2015年 |
---|---|---|
VISA | 63.71% | 63.95% |
マスターカード | 47.66% | 49.98% |
中国銀聯 | 46% | 46.9% |
中国のクレカ事情は他国と少し異なる
世界的に見てVISAとマスターカードの2強であることはわかってもらえたはずだ。
しかし、中国では銀聯カードのシェアが圧倒的で、市場シェア90%以上という驚きの数字を誇る。
「銀聯」と聞いてピンと来なくても、「Unionpay(ユニオンペイ)」なら聞いたことがあるのではないだろうか。
中国国内での加盟店は約1,800万店にも上り、圧倒的なシェアの裏付けとなっている。
銀聯カードが中国国内でこれだけのシェアを確立したのには理由がある。
まず中国におけるクレジットカード審査の厳しさにより、カードの普及が遅れていたこと。
かわりに、審査がなく、中国国内の銀行口座があれば誰でも作れる銀聯のデビットカードが普及していったのだ。
偽札被害や関税法違反を減らしたい中国当局の後押しもあり、今日の圧倒的なシェアを実現した。
5,5
現在銀聯カードは中国国外でも普及が進み、特に中国人が多く訪れるアジアを中心に世界180カ国、約5,500万店で利用可能だ(2021年3月時点)。
日本国内でも銀聯カード加盟店舗数は110万店にも達している(2020年12月末時点)。
中国銀聯が取引件数の増加率ナンバー1
2014年と2015年を比較して、取引件数の増加率が最も高かった国際ブランドは中国銀聯だ。
取引件数の増加率は約47%、増加件数にすると92億8,000万件に及ぶ。
VISAの増加件数の131億6,000万件には及ばないが、マスターカードの増加件数である80億9,000万件を上回っている。
以上の数字からも、中国銀聯の急成長がうかがえる。
普及している国際ブランドやカードは国による
日本ではカードの決済比率はそれほど高くなく、まだまだ現金派が根強く残っている。
使われるカードとしては圧倒的にクレジットカードが多いが、それでもクレジットカード決済比率世界一の韓国に比べれば非常に低い。
また、海外ではデビットカードやプリペイドカードが多く使われている国も珍しくないことがわかる。
デビットカードやプリペイドカードの占有率は上がってきており、国によってはクレジットカードを超える占有率になっている。
審査なしで作れる手軽さと、決済時に銀行口座からすぐ引き落とされる明瞭さから、今後も普及が進むだろう。
国際ブランドはVISAとMasterCardの2強で、特にVISAが圧倒的なシェアを誇る。
海外に旅行や出張で行く際には、VISAかMasterCardのクレジットカードを持っておくべきだと言える。
ただし、中国では中国銀聯が発行する銀聯カードの方が、使える場面が多い可能性がある。
海外に行く際、もし余裕があれば、国の決済事情を事前にリサーチしておくと、よりスマートに会計を済ませられるはずだ。