龍神自動車が運営する龍神バスは、2026年9月19日(土)始発より、熊野本宮線でカードのタッチ決済による乗車「クレカ乗車」を始める。世界遺産「熊野古道」を訪れる旅行者や地元利用者が、普段使い慣れた決済手段でそのまま乗車できるようになる。

龍神バス熊野本宮線が9月19日始発からタッチ決済に対応
対象となるのは熊野本宮線で、区間は紀伊田辺駅から発心門王子、および本宮大社前から発心門王子。これまで熊野本宮線の運賃支払いは現金またはQRコード決済に限られていたが、9月19日(土)の始発からタッチ決済対応のカード(クレジット・デビット・プリペイド)が使えるようになる。
熊野本宮線は世界遺産 熊野古道への主要なアクセス路線で、国内外から多くの利用者が乗車する。今回の導入はまず熊野本宮線が対象だが、龍神自動車は将来的に全路線への導入も視野に入れており、段階的に対象を広げていく方針を示している。
導入の狙いは訪日客の利便性と交通事業者の負担軽減
和歌山県では熊野古道エリアを中心にインバウンド需要が拡大しており、令和7年の外国人宿泊客数は71万人泊を超え過去最高を記録した(和歌山県 令和7年観光客動態調査)。県は2030年に旅行消費額2,900億円、インバウンド消費額300億円の達成を掲げ、受入環境の整備を進めている。
一方で、これまでの現金・QRコード決済には、事前の現金準備やアプリの設定・チャージ、乗車直前のアプリ立ち上げといった手間があった。交通事業者側にも現金管理や整理券運用の負担が残る。タッチ決済の導入は、こうした利用者と事業者双方の負担を減らし、円滑な乗降による定時運行の確保にもつなげる狙いがある。
乗車時と降車時の2回タッチで運賃を支払う
支払い方法はシンプルで、タッチ決済対応のカード、またはカードを設定したスマートフォン等を、車内に新設される専用端末に乗車時と降車時の2回タッチするだけでよい。区間に応じた運賃が自動で計算され、後日カード側に請求される仕組みだ。
事前チャージやアプリの起動が不要なため、初めて和歌山を訪れる旅行者でも、改札のない路線バスで戸惑わずに支払いを済ませられる。ただし降車時のタッチを忘れると正しい運賃が確定しないため、乗り降りの2回タッチは確実に行いたい。
対応ブランドは7種類、履歴はQ-moveで確認できる
利用できる決済ブランドは、Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯の7種類。国内で普及している主要ブランドに加え、訪日客が持つ海外発行カードにも幅広く対応する。
タッチ決済の利用履歴は、QUADRACが提供する「Q-move」サイト(https://q-move.info/)で会員登録すると確認できる。どの区間でいくら支払ったかを後から見返せるため、旅行中の交通費の把握や経費精算にも役立つ。
一定額を超えると暗証番号やサインが必要になる点に注意
タッチ決済は少額であればカードをかざすだけで完結するが、一定金額を超える支払いの場合は、カードを端末に挿入したうえで暗証番号の入力またはサインによる本人確認が求められる。乗車前にカードの暗証番号を確認しておくと、降車時に慌てずに済む。
なお今回の導入は既存の決済手段に加える形であり、現金・QRコード決済も引き続き利用できると考えられる。タッチ決済はあくまで選択肢が一つ増える位置づけだ。
三井住友カードの「stera transit」が支える仕組み
「クレカ乗車」は、三井住友カードの公共交通機関向けソリューション「stera transit」を活用している。「stera transit」は、三井住友カードがGMOペイメントゲートウェイ・GMOフィナンシャルゲートおよびVisaと共同で構築した決済プラットフォーム「stera」と、国際ブランドの非接触タッチ決済を組み合わせたもので、現金・事前チャージ不要で公共交通を利用できる。
このソリューションは全国各地で導入が進んでおり、龍神バスもその一つに加わる形だ。地方の路線バスでも交通系ICカードを新たに整備することなく、既存のクレジットカードの仕組みを使ってキャッシュレス乗車を実現できる点が、地域交通のデジタル化を後押ししている。今回の発表は龍神自動車、三井住友カード、ジェーシービー、小田原機器、QUADRACの5社による共同で行われた。
熊野古道を訪れる旅行者にとっての意味
現金の両替やアプリ設定に不慣れな訪日客にとって、普段使いのカードでそのまま乗れる環境は移動のハードルを下げる。日本の利用者にとっても、小銭を用意する手間や整理券の管理から解放されるメリットは小さくない。
熊野古道の巡礼路をバスで巡る予定がある人は、手持ちのカードが対応ブランドかを事前に確認し、暗証番号を把握しておくとよいだろう。まずは熊野本宮線からの導入だが、全路線への拡大が実現すれば、和歌山県内の移動全体がよりスムーズになることが期待される。















