ヤマトホールディングス傘下のヤマトフィナンシャル(以下YFC)は14日、クロネコメンバーズと会員情報を連携させたID決済サービス「クロネコペイ」を18日より開始すると発表した。
これは、会員数約2,000万人のクロネコメンバーズと会員情報を連携することにより、購入者が個人情報を都度入力する手間無く決済できるサービスだ。
YFCの無料会員サービス「クロネコメンバーズ」にクレジットカード情報を登録することで、「クロネコペイ」連携通販サイトでの商品購入時にクロネコペイを使った決済が可能となる。
なお、「クロネコペイ」の登録料・利用料は無料。
クロネコペイ導入の背景としては、従来の通販サイトで発生していた以下2つの問題により、販売機会の損失が少なからずあったことに起因している。
- 通販サイトで決済する際、住所や電話番号、クレジットカード情報を都度入力する手間がある
- 中小通販事業者のサイトでは、セキュリティリスクの懸念からクレジットカードの登録を避けるユーザーが多い
1に関しては、Webブラウザの登録機能を使うなどで対処しているユーザーも少なくはないが、その方法ではセキュリティに不安が残る。
そこで、クロネコメンバーズに個人情報を紐付けておくことで、入力の手間を無くして販売機会を防ぐ。
2は、特に登録を避ける傾向にあるのが中小の通販サイトとなっている。
YFCによると、大手のショッピングモールサイトではクレジットカードの利用率が6割に達するのに対し、中小の通販サイトでは利用率が3割に落ち込むという。
この事実から浮かび上がるのは、一定数のユーザーが個人情報漏えいを不安視しているという点だ。
クロネコペイは、こうしたユーザーに対するアプローチとして、国際セキュリティ基準「PCI DSS」に準拠したヤマトグループの決済システムによって管理される仕組みだ。
これまで、セキュリティ面での懸念からクレジットカードの利用を控えていたユーザーも、安心して買い物ができるようになる。
YFCが提供するネットショップ開業サービス「らくうるカート」を契約しているサイトでは6月18日から、「クロネコwebコレクト」を導入するサイトは7月末から、合計約4,000店舗で導入する。
対象サイトは、設定不要で自動的にクロネコペイが利用できるようになるとのこと。
また、API方式での提供も同日に開始されるため、自社開発でサイトを構築している事業者も導入することができる。
なお、発生する費用は決済手数料のみで、初期費用や固定費はかからない。
YFCは、今後各種ショッピングカートとの連携を拡大し、利用箇所の拡充に加え、宅急便の運賃支払いや、店舗での買い物などさまざまなシーンでも利用できるよう進化させていくとしている。
「Amazon Pay」とほとんど差はない
「クロネコペイ」と類似したサービスといえば、外部のECサイトでAmazonアカウントを使った決済が可能な「Amazon Pay」だ。
シンプルな決済方式で、決済情報入力・会員登録の手間を削減できるというメリットは、クロネコペイが開始する試みとまったく同じもの。
実際に、Amazon Payを導入したアメリカやヨーロッパでは、顧客単価とコンバージョン率が大きく向上したというデータもある。
国内では、「ZOZOTOWN」や「J Sportsオンデマンド」がAmazon Payを取り入れたことが話題となった。
それでは、類似しているAmazon Pay「クロネコペイ」とのサービスの差はどうかというと、実のところあまり大きな差はない。
どちらも規模の大きいサービスであるため、事業者とユーザーが得られるメリットがそこまで大きく変わることは無いだろう。
ただし、AmazonはAmazon Payを導入している同じ「ECサイト事業」であるのに対して、クロネコペイの場合はECサイトとしては競合しない。
国内でもAmazon Payを導入するサイトが増えてきている中で、YFCがどれだけクロネコペイを導入させていくかが気になるが、ユーザーにとってもっとも喜ばしいのは両方使えることだろう。
ECサイトにおいて、購入の度にいちいち個人情報を入力しなくてはならないのは、多くの人が面倒だと感じている。
クロネコペイとAmazon Payの普及で、ECサイトの利便性がさらに高まることが期待される。