イオンクレジットサービスは12日、富士通の生体認証技術「手のひら静脈認証」を活用したカードレス決済の実証実験を、2018年9月より開始すると発表した。
手のひら静脈認証を決済へ用いる取り組みは国内初。
実証実験はイオングループ従業員を対象に、ミニストップの一部店舗において実施される予定だ。
実験結果を踏まえ、イオングループ各社や加盟店での展開へ向けて検討していく。
今回実証に使われる「手のひら静脈認証」を利用したカードレス決済は、イオンカードと手のひらの静脈を紐付けて決済する仕組みだ。
事前に登録しておくことで、レジでの精算時に「生年月日の入力」「手のひらをかざす」の2つで決済を済ませることが可能。
これにより、クレジットカードもスマートフォンも現金も取り出す必要がなく、「手ぶら」での買い物を実現する。
生体認証を利用したカードレス決済のメリット
暗証番号ではなく、静脈や指紋・顔などの生体認証を用いた決済方法は、次のようなメリットが挙げられる。
- クレジットカードやスマートフォンを持たず、手ぶらで決済が可能
- 暗証番号の入力や、スマートフォンをかざすなどの手間が必要ない
- 体内情報のため偽造が困難で、安全に買い物ができる
大きなメリットは上記の3つだろう。
キャッシュレス決済が持つメリットをさらに高め、セキュリティ面での課題も解決することができる。
利便性・セキュリティ面に関しては、以下の2つの理由から非常に安定した決済が可能。
- 磁気ストライプの読み取り不良や、スマートフォンの故障など外的な影響を受けにくい
- 手のひら静脈の場合、血管の本数が多く複雑な配置であるため、本人特定能力が高い
カードやスマートデバイスは、外的影響による読み取り不良や紛失が起きるリスクがある。
しかし、生体認証ならばそうした影響を大きく受けることなく、安全に利用できる。
基本的にはクレジットカードと紐付けられるため、ポイント還元や特典も問題なく受けられるのもメリットと言える。
生体認証でカードレス決済が可能な手段・サービス
今回の静脈認証のほかに、決済手段として実用化が進む生体認証サービスは現在以下の3つ。
- 指紋認証
- 顔認証
- 音声認証
指紋認証
2018年、指紋認証センサーを備えたクレジットカードが、JCB、MasterCardなどから登場すると報じられている。
JCBの指紋認証付きクレジットカードについては本サイトでも報じ、現在JCBの社員を中心に実証実験が進められている最中だ。
MasterCardからは、「Zwipe MasterCard」が2018年に登場予定となっている。
指紋情報はカード本体に記録されるようになっており、決済時はカードの指紋センサーにタッチするだけで認証できる。
カードレスではないものの、従来の仕組みと比べて非常に高いセキュリティ性を持ちつつスピーディーに決済できるのが特徴だ。
顔認証
顔認証はApple Payを利用してネットショッピングをする際、パスワードの代わりとして導入されている。
一度カード情報を登録すれば、Face IDで簡単に決済できるのがメリットだ。
この他に、三井住友フィナンシャルグループが導入を進めているのが「顔パス」決済。
予めクレジットカードと顔を紐付けておき、実店舗での決済時に顔をカメラで撮影して、決済ができるようになる。
静脈認証と同じく手ぶらで決済ができるようになることから、期待が高まっている。
音声認証
オランダの金融機関「ING」では、米Nuanceの音声技術を利用したモバイル決済システムが導入されている。
スマホで専用窓口に電話をすることで、口座残高を確認したり、音声認証でパスワードを入力することなく送金が可能。
音声認証は指紋や顔などと異なり遠隔での認証が可能であるため、前述した金融機関やEC決済での普及が期待されている。
また、iOS版の「PayPal」では、Siriを使った音声決済も可能だ。
たとえば、「Siri、PayPalで○○さんに1000円払って」と命令すれば、予め登録しておいた送付先に送金ができる。
自分の体とクレジットカードがリンクする時代に
「生体情報」とクレジットカードやアカウントを紐付けて決済する仕組みは、続々と実用化に向かいつつある。
実用化すれば実質的に「自分の体がクレジットカードになる」ので、盗難が無くなり、故障する心配もない。
現金や電子マネーのように受け渡しが難しいので、既存の決済手段と競合することもなく消費者にとって受け入れやすくもあるだろう。
ただし、生体認証システムを導入するうえで、店舗側での導入コストが高くなってしまうという懸念点もある。
スマートフォンやPCでも、近年では指紋認証や顔認証が当たり前になってきていることから、コスト面が普及の妨げにならないことを願うばかりだ。
何はともあれ、2018年も半年が経って実用化に向けた実験はさらに進んできていることは間違いない。